【建築ビジュアライゼーション業界インタビュー Vol.2】西脇嗣人さん(wanimation)第3話「ビジュアル命」

このコラムは、建築ビジュアライゼーションに携わるスペシャルな方に、お話を聞いてみよう!というコーナーです。
3話目は、建築ビジュアライゼーションとBIMとの関わり合いから、引き続き「わにさん」に深掘りしていきます!

ビジュアル命

あいこ
あいこ
BIM関連のお仕事を、やったりしてるんですか?
BIM関連はないですね。BIMは基本設計、実施設計が多くて、自分らの仕事の半分くらいは、その前段階のコンペとかプロポーザルの段階なので。BIMとはあまり関わりがないですね。
わにさん
わにさん
あいこ
あいこ
「BIMで作ったモデルがあるけど使って」みたいな話はないですか?
もちろん来ますけど、あまり使わないかな。
わにさん
わにさん
あいこ
あいこ
あー、データ量も多くて、予想できない不具合が出る場合あるし、不要な情報を整理していくのに時間かかっちゃいますよね。
そうですね。でもそれを早く取り入れられるようになった人が、大きくなっていくはずなんで、なかなか軽視できないですね。あと、BIMに関していえば、考え方の違いが大きいです。
わにさん
わにさん
あいこ
あいこ
どんな違いですか?
BIM界隈の方のTwitterを見ると、建物を立てるための情報をすべて取り入れて設計業務をしている。きれいなビジュアルは、おまけ的な。
わにさん
わにさん
あいこ
あいこ
BIMは施工のためにあるというか、電気とか配管とかも含めたトータルのプランニングを見るために、あるのかな。
ビジュアル命でやってきたパース屋としては、ビジュアルの大切さを知ってもらえていないと、なかなか一緒に仕事する機会が生まれないなって。自分らは『ビジュアル大事だよね!』と思ってやってて、自分らの絵があったからコンペ取れました!って言われるのが、一番嬉しいじゃないですか。
わにさん
わにさん
あいこ
あいこ
超うれしい!
でも、そこじゃないんですよね、BIMって。基本、”Building Information Modeling”だからね。きれいなビジュアルはBIMの付属品であって、必須ではないのかなって。。でも、いつかBIMの考え方・やり方を理解して、チームを組みたい。
わにさん
わにさん
※スナックKviz物語 #05.白熱する攻防戦

※スナックKviz物語 #05.白熱する攻防戦

この想いよ、届けっ

10年くらい前は、自分たちがBIMのかわりに、「設計が変わるたびに絵を出してビジュアル検討」をしていたんですよ。BIMになってから、そういう仕事も減ってきて、なかなかビジュアルの大切さを知ってもらうのが大変だなって。
わにさん
わにさん
あいこ
あいこ
確かに。特に今は、LUMIONやTwinmotion、Enscapeとかあって、BIMから直接取り込めて絵は出せちゃうし。専門でやっている方を、軽視しやすいのかな。
そこはもう、時代の流れで仕方ないし、パース業界の仕事が減っていってるところなんですけど…
わにさん
わにさん
あいこ
あいこ
そう思っている人を、CG使って『ガーン!!!』ってさせて、『やっぱり専門の人に任せると違うのね!』って思わせる必要があるんですね。
そう!だからビジュアル追求を、自分たちはするべきだなって。『自分の仕事にも必要だ!』って思ってもらえないと、もちろん使ってもらえないので。
わにさん
わにさん
あいこ
あいこ
やっぱり、尊敬してもらえないとダメなのか。
それ、いいっすね!
わにさん
わにさん

それだ!と思うわにさん

仕事のスタイル ~wanimation編~

あいこ
あいこ
お互いのリスペクトと信頼関係が、大事ですよね。
基本、自分の仕事はそれです。何年もやってきて、『西脇に任せておけば、想像通りいい絵を出してくれる』って信頼関係が、やっと築けてきたので、自分はこのスタイルをとれてるんです。
『スケッチだけでやってくれ』とか、『言葉なくてもいいでしょ、分かるでしょ』『はい。分かります』だけで、成立する。地獄の期間を得て、確立してきた(笑)
わにさん
わにさん
あいこ
あいこ
すり合わせと積み重ねを、繰り返してきたんですね。どう仕事を進めてるんですか?
あえて言うなら、主導権を常に握る。
わにさん
わにさん
あいこ
あいこ
おぉ!どうやって?
一番初めに出す絵で、お客さんを納得させてしまう。完成度で納得させるわけではなくて、『これだけの情報でここまでやってくれたんだ、あとはもう任せても大丈夫だな』って思わせる絵を、できるだけ出す。「はじめだし、線画でいいや」ではなくて。
わにさん
わにさん
あいこ
あいこ
アングル出す時も、ですか?
アングルのときから、きっちりレンダリングして、5分くらいのレタッチをしてる。
わにさん
わにさん
あいこ
あいこ
レタッチもするんですか!?
5分くらいのね。一応、得意技なんで。そうすると「任せられるな」って、思ってもらえる。
わにさん
わにさん
あいこ
あいこ
早い段階でしっかりしたものを見れるから、安心してもらえるんですね。
修正って、自分たちの絵を見て判断するわけじゃないですか。不安な部分とか、「ちょっと格好悪いかもしれないけど、検討したい」って部分を、なるべくはじめの段階で、つぶしてあげる。だから、「アッ!かっこいいじゃん」って思わせるように、自分のフィルターを使って、格好悪いものを格好良く見せる。基本、全部格好良く見せるのが、自分の仕事なので、そこは、はじめからしてあげると、修正も基本減るかな。
わにさん
わにさん
あいこ
あいこ
確かに、最初に不安要素を感じさせちゃうと、細かい修正がエンドレスで来る引き金になっちゃいますよね。
そうそう。だから、それをずっと繰り返して長年付き合っていくと、本当に自分のペースで任せてもらえる。仮に遅れたとしても、「大丈夫だよね」ってなるし。
わにさん
わにさん
あいこ
あいこ
信頼してもらえるようになるんですね。
アングルを出すときも、自分は一番はじめ、基本的に一個しか出さないんです。複数出す人が多いと思うんですけど、「これがいい」っていうアングルしか、まずは出さないんですよ。でも、そうすると、「こっちのアングルからも見せて」とか「3段階刻んで見せて」って言われるんですよね。自分が『よっしゃ!』って思うのが、『すみません。一番最初のアングルでお願いします。これが一番格好良かったです』って言われた時。その時点でもう、主導権を握れますからね。「でしょ!自分に任せておけばいいんだよ」って、思わせることができる。
わにさん
わにさん
あいこ
あいこ
すげーかっけー!
だって、自分が格好良いと思うのが、重要でしょ?自分らが迷ってたら、多分最後まで迷走するから。
わにさん
わにさん
あいこ
あいこ
なるほど、たしかに!
迷ったとしても、一回立ち止まって、最終イメージを自分の中でちゃんと作って、そこに向かって突っ走る。
わにさん
わにさん
あいこ
あいこ
隠すとこは隠すと思うんですけど、正直にコミュニケーションをとるから、説得力があるんじゃないかなって思います。
説得力は欲しいですね。格好悪いと思ったものは、「絶対に修正が来るな…」って分かるじゃないですか。そこはやっぱり変な話、若い設計の子を育てるって訳じゃないけど…。結局、若い子が格好悪いものをそのまま出しても、上の人に見せに行って「格好悪い」って言われて、2回目の修正がうちに戻って来る。今までそういう歴史を繰り返してきていたんで、基本的に格好悪いと思ったものは、『大丈夫ですか?これじゃ上のOKでないと思うよ』って言う。
わにさん
わにさん
あいこ
あいこ
そこまで言うんだ!
仲良くなった人だけですよ。生意気言い出すと、またそれはそれで変わってくるんで。もちろん抑えるけど、なるべく正直に。
わにさん
わにさん
あいこ
あいこ
初めてのお客さんの場合だと、制作にかける時間をなるべく早くするなど、スピード感は気を付けていますか?
気を付けないです。早い・安いを目指している訳ではないので、はじめてだから早くするとかしない。クオリティの部分で認められるのを目指してるので、その売りを存分に発揮するためには、「これだけの時間かかりますよ」っていうのは、絶対に主張してます。だから、短期の依頼は、のっぴきならない事情がない限り、基本はやらないです。
わにさん
わにさん
※スナックKviz物語 #06.冷戦状態突入。ターゲット変更。

※スナックKviz物語 #06.冷戦状態突入。ターゲット変更。

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天野 愛子

天野 愛子Writer, Interviewer

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フリーランス2年生。 建築CGパース制作会社退職後、心が踊る出会いを求め、活動の場を多岐に渡り拡大中。

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