PLATEAUとは?|Map The New Worldとして描く国土交通省の建築・都市開発、建設DXの進化と未来

国土交通省が進める3D都市モデル整備のリーディングプロジェクトの「PLATEAU(プラトー)」。既に一部の3D都市モデルはオープンデータとして国土交通省によって開示されていて、建築BIMや都市開発、建築DXとの親和性の高さからも注目を集めています。今後の新しいビジネス・サービスの創出にも大きく関わるであろうPLATEAUについて、ユースケースなど交えて紹介していきます。

※この記事は、国土交通省『建築BIM加速化事業について』に関する資料を元に編集・作成しております。

目次

PLATEAU(プラトー)とは

PLATEAUとは、国土交通省が進める3D都市モデル整備のリーディングプロジェクトです。都市活動のためのプラットフォームとしてオープンデータを公開することで、誰もが都市データを自由に利用できる様にすることを目指しています。すでに、一部のビジュアライゼーション化した3D都市モデルのオープンデータは、国土交通省によって開示されています。技術的には「デジタルツイン」と同様であり、都市単位でデジタルツインを作成していくようなイメージです。

PLATEAUを推進する目的の1つに、スマートシティをはじめとしたまちづくりのDX(デジタル・トランスフォーメーション)によって、人間中心の社会を実現することが挙げられます。また、2022年度には推進の一環として「都市空間情報デジタル基盤構築支援事業」が創設されました。地方公共団体における3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化を推進するための補助制度であり、今後も多岐にわたる活用が期待されています。

デジタルツインについては、より詳しくこちらの記事にて解説しています。

デジタルツインとは|仮想世界と現実世界の融合

デジタルツインとは|仮想世界と現実世界の融合
https://www.kviz.jp/xr/about_digital_twin/

建築・都市のDXの進化と未来

建築・都市のDXのためには、中小事業者がBIMを活用する建築プロジェクトへの支援や、PLATEAUの3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化の推進が必要です。また、官民連携による不動産IDのユースケース開発に向けた実証を通じて、都市開発・まちづくりの効率化・迅速化や、建築・都市に関する情報などを活用した新サービス・新産業の創出を図ることも求められます。

ここでは、建築・都市のDX化に必要なPLATEAUとBIMの組み合わせと、不動産IDについて説明します。

PLATEAU × BIM

PLATEAUの3D表現は、都市レベルの規模ではありますがBIMをGoogle Earthで再現するようなイメージです。そのため、BIMの活用・連携はPLATEAUを推進していくうえで必要不可欠となります。PLATEAUは、オープンデータを提供するだけではなく3D都市モデルのユースケース開発にも力を入れています。地方自治体や民間企業、大学、研究機関と組んで実験を重ねていくことにより、ユースケースを蓄積しています。その1つのケースとして、PLATEAUとBIMの統合があげられます。

PLATEAUの3D都市モデルに建物のBIMデータを取り込み、バーチャル空間を構築しています。BIMデータの一部である災害発生時の人の動きなどをシミュレーションすることによって、災害時の適切な避難方法を検証することも可能です。

不動産IDとは?

不動産IDとは、不動産登記番号(13ケタ)に特定コード(4ケタ)を足した17ケタの番号で構成される不動産を特定することができるIDのことです。不動産IDには不動産の売買や賃貸、管理やインフラ整備などにおいてさまざまなメリットがあり、浸透することで発展的な利用が期待されています。その一方で、個人情報保護法との関係もあるため、法整備などが課題として挙げられています。

不動産IDは、PLATEAUに代表される「建築・都市のDX」の推進においては、情報連携のキーになります。共通コードである不動産IDの社会実装を加速するためには、官民連携プラットフォームの設置が必要です。各分野でのユースケース展開に向け、実証実験や不動産IDの確認システムの技術実証を実施していくことが今後重要になると考えられています。

PLATEAUの都市モデルプレビュー

PLATEAUの3D都市モデルデータは開示されているため、ブラウザでプレビューができます。実際にどのようにプレビューできるのか見ていきましょう。

⇒『PLATEAU VIEW by MLIT』:https://plateauview.mlit.go.jp/

PLATEAUの都市モデルプレビュー「建物モデル 港区」PLATEAU VIEW by MLIT

左側にある「Explore map data」から、表示するデータを選びます。今回は「建物モデル (港区)」を選択します(港区には、Kvizを運営する株式会社Tooがあることからです、皆さんの好きなエリアをお選びください)。

Explore map data「建物モデル 港区」PLATEAU VIEW by MLIT

マップに追加すると、上の画像のように平面で表示されていたマップに建物のデータが読み込まれます。

用途による塗り分け「建物モデル 港区」PLATEAU VIEW by MLIT

そこから、「高さによる塗り分け」や「用途による塗り分け」、「建物構造による塗り分け」、「耐火構造種別による塗り分け」、「浸水ランク」など、それぞれ条件を付けて見ることができます。上の画像は、「用途による塗り分け」を反映した様子です。建物が各用途によって色分けされているのが確認できます。

用途による塗り分け「虎ノ門36森ビル」PLATEAU VIEW by MLIT

試しに、Kvizを運営している株式会社Tooの東京オフィスを探してみました。薄く赤みがかっているビルが、『虎ノ門36森ビル』です。クリックするだけで、高さや階数を含めた細かい情報が組み込まれていることが確認できます。

このように、PLATEAUの3D都市モデルは誰でも簡単にアクセス・閲覧が可能です。

Google Earthとの違い

PLATEAUについて聞いた段階で、「Google Earthと似ている」と思った人も多いと思います。似たような見た目をしている2つのツールですが、データ規格が大きく異なります。

Google Earthなどの3D地図のデータは、一般的に「ジオメトリモデル」といわれているものです。標高値をポイントで取ってジオメトリを形成し、ポリゴンにするという手法で作られています。

一方で、PLATEAUのデータにはそれぞれの建築物にそれぞれのデータが含まれています。建築物の天井や壁などのパーツごとに使われている材質までコーディング(演算処理)されているということです。

コーディング(演算処理)されたPLATEAUの都市データ

上の画像は前項目でPLATEAUで表示した東京都港区の同エリアをGoogle Earthで見たものです。細かい起伏や色味まで再現されてはいますが、細かい情報はコーディングされていないため、建築物をカテゴリに分けて表示するなどの使い方はできません。

PLATEAUの3D都市モデルデータではそれぞれの建築物や壁を区別できるため、それだけで使い方が大きく異なる2つのツールだということがわかります。

活用事例(ユースケース)

では、実際の都市計画での活用事例を見ていきます。

徒歩及び車による時系列水害避難行動シミュレーション

まずは、熊本県熊本市南区の特定4校区および、北側に隣接する沿岸地域の8校区での事例です。本事例では、3D都市モデルをベースとして、災害発生時の時系列的な徒歩および車による住民の避難行動をシミュレーションするために、2つのシステムを開発しました。

1つ目は、時系列的な徒歩および車による住民の避難行動と浸水域を再現する『3D水害避難シミュレーションシステム』です。2つ目は、避難開始地点やタイミング、避難先の位置や徒歩・車などを指定することで浸水状況と避難行動の軌跡を再現し、被災リスクの有無などを体験できる『3Dパーソナル避難シミュレーションソフトウェア』です。

これらのシミュレーションの結果をもとに、さまざまなパターンの水害や避難行動ごとの問題点の把握や、住民一人ひとりの防災行動計画の普及促進を目指しています。

3D水害避難シミュレーションシステムによって、時間経過ごとに発生する自動車の渋滞箇所や避難者数が把握できます。また、時間経過ごとの浸水状況が3D都市モデル上に再現されることで、建物が浸水していく様子を把握することも可能です。これらの結果は、地域防災計画の適切な改善と実効性向上の検討に役立つものと考えられています。

また、本システムの住民への普及のため、熊本市のホームページでのシステム公開を予定しています。あわせて、ホームページ上での利用が困難な人のためにシミュレーションの動画を住民の集会で上映することも検討しています。パソコンの利用が困難な人のために、スマートフォンやタブレットでも簡単に操作可能にすることも検討されています。システムとしての改良や、誰でも簡単に使えるようにするための取り組みが市単位で行われています。

画像:シミュレーションの実施結果(浸水エリアの表示)

画像:シミュレーションの実施結果(浸水エリアの表示)

防災エリアマネジメントDX

東京都港区の品川駅北周辺地区における、防災の観点から見た人流シミュレーションの事例です。本事例では、3D都市モデルを利用した大規模誘導・避難シミュレーション環境を構築し、エリア内防災計画の更新や合意形成における有効性を検証することで、防災を切り口にしたエリアマネジメントのDXを目指しました。あわせて、災害時の潜在的リスクや、災害時に必要な避難計画を三次元的に可視化しました。

それらの成果を活用し、都市再生安全確保計画の更新に向けた避難のプランニングや合意形成の支援を行いました。これらの取組みを通じて、災害リスクの共有や合意形成コストの軽減といった観点から3D都市モデルを利用したエリアマネジメント活動の有効性を検証しました。

開発したシミュレーション環境を利用し、品川駅・田町駅周辺地域の都市再生安全確保計画で定める災害時行動フローをもとに、「発災後から3時間における避難」と「発災後3~6時間における避難」を想定した避難シミュレーションを実施しました。

シミュレーション結果から、「発災後から3時間」のケースで屋外に一時避難させる場合、運営者側で避難誘導を行わないと、混乱が発生する可能性が高いことが確認されました。そこから、建物から早く屋外に避難させるという施策は最適解ではない可能性が識別され、屋内に留める一時避難をした方がいいケースもありうるなど、新しい選択肢を得ることができました。

このように、さまざまなケースを想定したシミュレーションを行うことで、より安全な暮らしを実現することに貢献しています。

画像:シミュレーションの様子(避難開始から避難完了)

画像:シミュレーションの様子(避難開始から避難完了)

3D都市モデルとBIMを活用したモビリティ自律運行システム

川崎市扇町地区と大阪市夢洲地区周辺で行われた、ドローン及び無人搬送車両の自律運行システム開発の事例です。都市部における建設工事では資材運搬などによる交通渋滞が課題となっていて、自律運航可能なドローンや無人搬送車両の活用による解決が期待されています。一方で、ドローンのGPS測位のみの飛行では、受信状況が悪いビルの間などでは安全な飛行を担保することが難しい現実があります。

本事例では上記の課題を解決し、資材運搬を担うドローンや無人搬送車両の自律運行を可能とするため、LiDARやGPSなどのセンサーと3D都市モデルを利用した自己位置測位を組み合わせた運航システムを開発しました。

本システムは、LiDARと3D都市モデル・BIMモデルを組み合わせた自己位置推定の仕組みを構築しました。さらなる実用化に向けて、本事例での課題を迅速に解決し、効率面と安全面において大きく高めた運搬システムサービスを新しく生み出すとともに、汎用性の高い本システムのその他サービスへの横展開も考えられています。

画像:搬送車両の自律走行時のデジタルツインビューワー

画像:搬送車両の自律走行時のデジタルツインビューワー

PLATEAUの今後

2020年度に始まったプロジェクトPLATEAUですが、2022年度までに100を超える都市で整備されていて、今後も増加されていくことが予想されます。年度が進むごとに3D都市モデル整備対象都市とユースケースは増え続けていて、自治体からも継続的に応募がある状態が続いています。また、ユースケースが増えることによって他都市で参考にすることもでき、相互作用でさらに拡大が加速していくことが予想されます。

また、2022年には国土交通省による「建築BIM加速化事業」も創設されており、今後はBIMとPLATEAU共々幅広い分野・地域で活用されていくことも期待されています。防災・人流・環境・インフラなどのさまざまな分野で取り込まれることで、住民ひとりひとりにとっての安全で住みやすいまちづくりが進んでいくことでしょう。

もし『PLATEAU』についてさらに詳しく導入を検討される方に、こちらの資料もおすすめとなります。国土交通省 都市局発行の『3D都市モデル導入のためのガイドブック』です。ご興味のある方は、ぜひご一読ください。

3D都市モデルの導入ガイダンス

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