建築ビジュアライゼーションMeetUp第四弾 レポート Vol.3
『広域フォトグラメトリによる建築デジタルアーカイブ』

2019年12月に開催しました「建築ビジュアライゼーションMeetUp 第四弾」。
3回目は、株式会社ホロラボ 藤原 龍(りょう)さんによる、『広域フォトグラメトリによる建築デジタルアーカイブ』の講演です。

【Too主催】建築ビジュアライゼーションMeetUp第四弾 レポート Vol.3

【Too主催】建築ビジュアライゼーションMeetUp第四弾 レポート Vol.3『広域フォトグラメトリによる建築デジタルアーカイブ』

藤原さんは、「銭洗弁天VR作ってみた」や「点描芸大作ってみた」など、常に新しい挑戦をし続ける「建築デジタルアーカイブ」の立役者でもあります。2019年7月にホロラボにジョイン。今回は、「フォトグラメトリとは?」や活用事例などの具体的な構築方法を交えて、お話いただきました。

尚、本セッションは、当日の映像公開を藤原さんご本人より、許可いただいております。どうぞこちらも合わせてご覧ください。

自己紹介

皆さん、こんにちは。今日は宜しくお願いいたします。藤原 「龍」と書いて「リョウ」と読みます。
私は、静止画や動画、解析可視化、VR/AR/MR、そして建築にまつわるビジュアライゼーションを日々追いかけてお仕事をしています。今日は、いくつかの制作物をご覧いただきたいと思います。

株式会社ホロラボ 藤原龍(りょう)さんのプロフィール

株式会社ホロラボ 藤原龍(りょう)さんのプロフィール

フォトグラメトリと、建築デジタルアーカイブの活用事例

それではまず、フォトグラメトリについて、見ていきましょう。

フォトグラメトリの構成

フォトグラメトリの構成

フォトグラメトリとは、複数の写真から3Dモデルを生成する手法のことで、様々なアングルで対象を撮影して、専用のツールを使って生成します。

例えば、「航空写真を用いた写真測量」や「映画・ゲームの素材制作」などに使われています。前者は、無人航空機(UAV)を使うため大規模なものになり、後者については、手持ちカメラで撮影が可能なため、小規模なフォトグラメトリになりますね。

では、建築デジタルアーカイブにおいてはどちらが使われていくのかというと、建築物のアーカイブになるため、大規模ではありますが手持ちカメラで行ったりもします。

銭洗弁天VR

こちらは、神奈川県にある「銭洗弁天」という神社を手持ちカメラで歩き回りながら写真におさえていき、3700枚ほどの撮影データをフォトグラメトリを用いて3Dモデル化したものです。一連のフォトグラメトリ処理には、実に6日間ほどの時間を要しています。

「銭洗弁天VR」

銭洗弁天では、「デジタル促進」や「リアル観光促進」に活用してもらえることを検討しています。VRチャットの環境があれば、海外や遠方の方も訪れることが可能ですし、映像を見た方から「また行ってみたくなった」「行ってきた」との声もいただきました。実際に、ザルと柄杓を持って銭洗いを体験できる「インタラクション」も楽しむことができます。また、普段入れない夜の銭洗弁天を訪れることが出来るのも、3Dならではの魅力的な表現になりますね。

活用事例「銭洗弁天VR」01

活用事例「銭洗弁天VR」

活用事例「銭洗弁天VR」02

活用事例「銭洗弁天VR」

旧都城市民会館

次にデジタルアーカイブの事例を見ていきましょう。こちらは、解体されることになった「旧都城市民会館」を3次元デジタルアーカイブを行い、記録に残していくプロジェクトです。

gluon(グルーオン)さんとKUMONOSさん主催のもと、クラウドファンディング・サイト「CAMPFIRE」を用いて、活動資金を集めながらプロジェクトを実施した形となります。
メタボリズムの名建築『旧都城市民会館』を3次元スキャンで記録に残したい。|CAMPFIRE

「旧都城市民会館」3次元デジタルアーカイブ・プロジェクト

「旧都城市民会館」3次元デジタルアーカイブ・プロジェクト

このプロジェクトでは、主に2点の活用イメージを持って、制作に取り掛かりました。

VR化

地上からの撮影だけでなく、ドローンによる空撮、レーザースキャンまでを組み合わせて制作しています。空間を当時のままアーカイブしておくことの他に、「市民ホール」としての建築の機能自体をVRで残していきたいと考えました。こちらぜひVRで立体的にご覧いただきたいです。

活用事例01:VR化

活用事例01:VR化

WebAR化

こちらのQRコードを読み取っていただくと、アプリ不要でAR化が可能になります。

活用事例02:WebAR化

活用事例02:WebAR化” width=”1200″ height=”669″ />「旧都城市民会館」3次元デジタルアーカイブ・プロジェクト

計測した3 次元データは、建築資料として空間へのより深い理解を促す立体モデルの制作をはじめ、ウォークスルー映像の作成、ARやVRを通した空間の疑似体験、3Dプリンターを用いた模型製作など多様なメディア形式で再現・活用することが可能です。こうした成果物は「教育材料としても有用では?」との声もいただけており、嬉しい限りです。

「旧都城市民会館」3次元デジタルアーカイブ・プロジェクトに寄せられたユーザーの声

「旧都城市民会館」3次元デジタルアーカイブ・プロジェクトに寄せられたユーザーの声

ミラーワールド

次に、DiGITAL ARTISAN(デジタルアルティザン)さんとのお取り組みについて、お話します。
『VRAA Meetup 2019』の会場を、ミラーワールドとして利用できるように制作させていただきました。リアル会場とバーチャル会場が繋がった世界で、インタラクションを実現しています。

DiGITAL ARTISAN - VRAA MeetUp 2019

DiGITAL ARTISAN – VRAA MeetUp 2019

リアル会場側からの映像:

バーチャル会場側からの映像:@phio_alchemistさんの投稿をお借りします。ありがとうございます。

#VRAA ミートアップのバーチャル会場!
実際の会場がフォトグラメトリで再現されていて、しかも現実会場と音声も映像も繋がっている!すごい!
これぞバーチャル時代のミートアップ!!! pic.twitter.com/yOTpPYJpgy

— フィオ(Phio)🔜Vket4 (@phio_alchemist) August 18, 2019

他にもいくつか事例を載せております。詳しくは、本セッションの映像をご覧ください。

こうした活用事例を作る際に、使用した撮影枚数と時間になります。この制作時間で済ませるためには、ロケハンをして、本番を行うという流れが必要です。

活用事例を作る際に、使用した撮影枚数と時間

活用事例を作る際に、使用した撮影枚数と時間

被災状況可視化

また、別事例として、2019年の台風19号のときの阿武隈川沿いの氾濫の影響をフォトグラメトリし、可視化しています。国土地理院で公開された203枚の写真から生成を行いました。
膨大な写真を1つのモデルにすることで、自然災害の状況も確認しやすくなるという試みです。

台風19号
阿武隈川沿いを3D化してみた。

国土地理院で公開された写真203枚から生成。

膨大な写真も1つのモデルにする事で広域の状況も確認しやすくなるだろうか。#Photogrammetry pic.twitter.com/NMyK4gUFij

— 龍 lilea (@lileaLab) October 16, 2019

メンテナンスの可視化

車のエンジンルームを可視化させることで、メンテナンスをしやすくする映像も作ってみました。

車のエンジンルームの可視化

車のエンジンルームの可視化

制作環境

さて、ここからは制作環境を紹介します。

①使用しているカメラ・レンズ

①使用しているカメラ・レンズ

①使用しているカメラ・レンズ

カメラはソニーのα7Ⅲを使っています。その理由として、
・フルサイズ
・24Mpx
・ボディ内手ブレ補正
・チルト式モニター
それぞれ写真のクオリティ、画質や様々なアングルに対応できるようなポイントを考え、選んでいます。

レンズ「SIGMA 12-24mm F4-5.6 Ⅱ DG HSM」
・超広角 
フォトグラメトリは写真の60~70%程を重ねる必要があり、そのため広角レンズにすることで撮る必要な枚数を減らすことができます。

機材費はカメラで20万、レンズで10万ほど。スマホでもフォトグラメトリは可能ですが、クオリティ重視の場合どうしても機材費がかさみます。

②PCの構成

②PCの構成

②PCの構成

PCの構成に関しては、このスペックでも足りない状態で、約3,000枚の処理で6日ほどかかることもあります。3,000枚の写真で80GB程度かかるため、大容量でないと対応できません。

また、ノートPCではフォトグラメトリは絶対やめましょう。
バッテリーが膨らんだりして、ノートPCが使えなくなります。

PCバッテリー膨張による破損

③フォトグラメトリソフト

③フォトグラメトリソフト

③フォトグラメトリソフト

主にReality Captureを使用しています。

フォトグラメトリが苦手な部材

フォトグラメトリは何でも再現できるわけではなく、破綻する箇所もあります。

フォトグラメトリが苦手な部材

フォトグラメトリが苦手な部材

・透明:ガラス
・反射/光沢:鏡
・特徴のない面:真っ白な壁
・暗所:夜
・薄い/細い:テーブル天板、ケーブル

上記の箇所は穴あきやノイズ、抜けてうまく生成されません。破綻してしまった場合は、修正を手作業でする必要があり、手間がかかります。フォトグラメトリ処理よりも、モデルを業務レベルまで持っていくのが大変になります。

こういった破綻を防ぐためには、事前の準備や撮影時に気をつけることである程度避けることができます。

フォトグラメトリの破綻を防ぐ対応例

フォトグラメトリの破綻を防ぐ対応例

①PLフィルター

 反射を制御するフィルター

②撮影ボックス

 商品撮影などで使われる撮影ボックスを活用。

③浮かせて撮る

 接地面が繋がって破綻してしまうのを防ぐ

④無反射撮影

 PLフィルターを2枚使用した外光に影響を受けない撮影方法。
 ・レンズにPLフィルター貼る
 ・ストロボに偏光板を貼る

⑤3Dスキャンスプレー

光沢のあるものは破綻するのでマットにするため、スプレーを吹き付ける。

⑥深度合成撮影

 手前から奥までピントを合った写真を生成する手法。
 対応カメラを使う場合は5万円~20万円程度の費用がかかる。
 外部ソフトを使って行うことも可能。

ただし、もし破綻を起こしていたら、手作業で直すしかありませんので、手前の準備が大事になってくるということですね。

高精度フォトグラメトリ

フォトグラメトリを高精度に生成するためには、以下のような2点の技術を組み合わせると、より精度が上がります。

①レーザースキャンの併用

①レーザースキャンの併用

①レーザースキャンの併用

写真だけでは生成できなかったモデルを生成するために、レーザースキャンを併用しました。
写真で高品質テクスチャを、レーザースキャンでmm単位の精度を合わせた、いいとこ取りが可能です。写真の時よりも正確に生成することができます。
デメリットは時間がかかり過ぎてしまうことで、今後はそちらを改善を目指しています。

②RTK-GNSS計測の併用

②RTK-GNSS計測の併用

②RTK-GNSS計測の併用

より精度を求めるなら「写真」×「レーザースキャン」×「GNSS」がおすすめです。
RTKとは「リアルタイムキネマティック」の略でして、GPS単独の測位より高精度な測量が可能になります。

機材について昔は200万円程度したものが、今では5万円くらいで購入できます。そのため、昔より導入コストが低くなっていて、高精度にフォトグラメトリを生成できます。ただ、屋外前提になってしまい、屋内の生成には不向きというデメリットもあります。

まとめ

フォトグラメトリによる建築デジタルアーカイブの需要として、

・建替/解体となる建物を残したい
・ARやVRで活用したい(プロモーション等)
・災害シミュレーション(街レベルでのモデル化)

といったものが多く、複数の技術を組み合わせることで品質の向上が図れると考えています。

まだまだ大きな可能性が秘められている分野であることは間違いありません。引き続き、検証と情報発信を進めていきたいと考えています。
ご清聴いただきまして、誠にありがとうございました。

建築ビジュアライゼーションMeetUp第四弾 レポート Vol.2
『建築教育のアップデート』

2019年12月に開催しました「建築ビジュアライゼーションMeetUp 第四弾」。
2回目は、広島工業大学環境学部建築デザイン学科 准教授
杉田 宗 さんによる講演です。

【Too主催】建築ビジュアライゼーションMeetUp第四弾 レポート Vol.2

【Too主催】建築ビジュアライゼーションMeetUp第四弾 レポート Vol.2『3建築教育のアップデート』

『建築教育のアップデート』と題して、

・今建築教育が抱えている課題
・世界ではどの様な建築教育が行われているのか?
・広島工業大学でスタートしたデジタルデザイン教育
・杉田宗研究室/Hiroshima Design Labの活動・研究

について、お話いただきました。

尚、本セッションは、当日の映像公開を杉田さんご本人より、許可いただいております。どうぞこちらも合わせてご覧ください。

広島工業大学環境学部建築デザイン学科 准教授 杉田 宗 さん

広島工業大学環境学部建築デザイン学科 准教授 杉田 宗 さん

皆さん、こんにちは。広島工業大学で建築の教育に携わっている杉田と申します。今日は宜しくお願いいたします。
今日はいろいろなバッググラウンドな方がいらっしゃいますが、建築教育の視点から、情報技術がどのように建築業界に関わっているのかを説明していきます。

まず、私が大学院時代にセシル・バルモンドのスタジオで取り組んだ作品を見ていただきましょう。
私は、群知能を設計手法に取り入れられるのか、ということを研究していました。

空間には、時間を経て人が使っていくことにより、アクティビティの余韻、いわゆる空間に残る手垢のようなものが蓄積されていきます。
「人間の行動のなかにも、アリのフェロモンみたいなものがあり、蓄積されることで空間が定義されるのではないか?」という仮説のもと、研究を進めました。

実際にその定義をもとに、「人がどういったアクティビティを誘発して、そのアクティビティがいろいろな人を巻き込みながら、建築が作られるという手法ができるのでは?」という点からアルゴリズムを考えながら、プログラムを書いています。

人がどういったアクティビティを誘発して、そのアクティビティがまたいろいろな人を巻き込みながら、建築が作られるという手法ができるのでは?

フェロモンが濃ければ濃いほど、物質化していきます。それが建築の組織になっていくイメージです。スティック(建築資材)も知能をもっていて、周りの動きを鑑みながらどういった向きでどういった組み合わせをすれば良いのかを判断しながら、、サイトのなかにエージェントを走らせて空間を作らせていきました。

パビリオン 空間イメージ

パビリオン 空間イメージ

こちらが、同様の手法を使い、実際に作ったパビリオンです。一定のルールに従い、近似した並び替えを行うようなプログラムを書き、それを見ながら一つずつオブジェクトを作っていきました。

パビリオン

パビリオン

また、東京大学の小渕研究室では割り箸を使ったパビリオンを建設したり、より実用的な商品棚のデザインに応用しています。

割り箸を使ったパビリオン(東京大学 小渕研究室)

割り箸を使ったパビリオン(東京大学 小渕研究室)

情報技術の進化は、建築に何をもたらすのか??

さて、ここからは「新しい建築」と「新しい働き方」の2つの観点から、話を進めていきます。

「新しい建築」と「新しい働き方」の2つの観点

「新しい建築」と「新しい働き方」の2つの観点

今、この2つは、別々なベクトルとして存在している状態です。というのも、コンピュータを使って「新しい建築」を作ろうとしている建築家が世界中には沢山います。
その一方で、コンピューターを活用することで「効率化を求めて働き方を変える」ということを考えている人もいます。設計業務をBIMに移行させるようなことはこちらに含まれると思います。これら2つは、使う技術やツールは共通しますが、根本的に性格が違うことで、目的が明確でないと、混乱する原因にもなります。

しかし、これからの時代は、この2つの違いを理解した上で、この2つを両立させるに、アウトプットとプロセスを同時に変えていく必要があります。10-20代の学生たちには、「新しい働き方を改革しながら、その先に新しい建築を作る」という意識をもたないと、情報技術の革新は出てこないのではと、考えています。同時に変えていく意識ですね。

例えば、アメリカのサイアーク建築大学には、各学生の机に3Dプリンタが、一人一台用意されています。昼にRhinocerosAutodesk Mayaを使ってモデリングしたものを、夜プリントアウトして、次の日皆でみる。これを当たり前のようにやっています。日本とは大きな教育の差があります。

また、ロボットが教育や研究機関に導入されており、どうロボットを使って建築を作るのか、生産に生かしていくのかが研究されています。
このロボットの最初の研究は、スイスのチューリッヒ工科大学。10年前に自動車の工場にあったロボットをレールに載せ、ホームセンターで売っているようなレンガを積み重ねていく研究を作ったのが有名です。

「新しい建築」と「新しい働き方」の2つの観点

「新しい建築」と「新しい働き方」の2つの観点

プログラムを介して、複雑な形状に並べていくようにすれば、人間が作れないような建築ができるんですよね。そのためには、ロボットとコミュニケーションができる人間が、建築の業界に入っていかないといけません。
この研究はどんどん発展していきます。今度は、コンテナにロボットを乗せて、スイスからニューヨークへ運び、パビリオンを作ったりしています。

建築にロボットを取り入れた、新しいコミュニケーションと働き方

ここで、MX3Dというオランダのアムステルダムにある研究機関の事例を紹介しましょう。ロボット・アームの先に、鉄の3Dプリンタをつけて構造物を作っていきます。これは、細い運河の上に架かる橋となります。

『MX3D Printed Bridge Update 2018』

研究が街に使われるものにまで応用されているのが、最近の特長ですね。

また、スイスのチューリッヒ工科大学には、「dfab」という建築のためのロボットの施設が出来ています。ここでは、人間とロボットが協力して建物のデザインをし、建設していく研究されています。開始当初より12年間分の大きな研究予算を手にしたことで、多くの研究者が集まる場を提供できています。その最初の4年間の研究成果をまとめたものがこちらです。

『The first 4 years of the NCCR Digital Fabrication』

建築の未来を伝えている映像、と受け取って良いでしょう。

これらの海外の事例から、新しい建築を新しい働き方で開拓している過程が、確認できます。日本でもそろそろ始めていかなければ、これまでの建築業界を次の時代につなげていくのが難しくなるのでは、と思っているところです。

今、若い世代には、大きいチャンスが沢山あります。積極的に新しい技術を吸収し、社会に出ていく分野になりうる可能性が建築にはあるのです。

そのためには、技術の進歩だけではなく、それを扱う人間を増やさないと、革新は生まれていきません。日本の建築業界には様々な技術がありますが、ごく一部の人しか使えていないのが現状です。そのうえで、大学の教育は大事になると強く感じています。

広島工業大学のデジタルデザイン教育

それではここから、広島工業大学デジタルデザイン系授業のご紹介をさせていただきます。
2016年から広島工業大学では、「デジタルデザイン教育」を推し進めています。私は1年生後期から2年生までの2年間で、3つの講義を行っています。

杉田さんの講義担当エリア

 

この授業が始まる前に、入学直後に行う「デザイン・ワークショップ」というオリエンテーションがあります。

すべては手からはじまる

入学者全員に一泊二日の山の合宿をします。まず、森で自然の木を切り、角材にまで加工し、最後にその木が椅子に変わるまでの工場の行程を見学・体験する。自然の産物の木が我々の生活に関わるまでのプロセスを観察する機会を作ります。

デザイン・ワークショップの風景

デザイン・ワークショップの風景

その後、実際の15週の授業で、ベンチの設計をし、カットして組み立てるまでを行います。

なぜベンチなのか、それは以下の4つのものが学べるためです。

①建築計画:奥行きや高さ、人間工学的な学問領域
②構造力学:強度は構造力学
③建築生産:どうつないでいくのか
④意匠:建築デザインの内容が統合されたものが形になっていく

すべての内容が一つのベンチ作りに含まれているんですね。
ここでは、PC作業は全くありません。まず既存の木工(ものづくり)に触れることを行います。

1〜2年生で、基礎からデザインを覚えていく

その後に、デジタルデザイン系授業が始まります。ドアノブを作ったり、渡廊下を設計する課題では、手すりや階段をGrasshopperで作り、Rhinocerosで全体の形を決めていくことができるようになります。

その後に、プログラムが始まります。ドアノブを作ったり、手すりや階段をGrasshopperで作り、Rhinocerosで全体の形を決めていくことができるようになります。

2年前期では、実際のものに具現化していく授業になっています。モデリングはここまでで習得しているので、Autodesk Fusion 360を使ったレンダリングやCAMデータの書き出しなどを追加で教えます。

こちらは、レーザーカッターを使った課題です。材を組み立てながら、プロトタイプで橋を作り、強度を上げていくことを覚えます。
何キロに耐えられるのかを考えるのですが、負荷をかけてみて500g持たない学生もいれば、5kgもつ学生もいて、「これもデザインなんだ」というのを体感してもらいます。イメージをデザインに落とし込めない学生が、この時点ではまだ多いですね。

橋のデザイン

 

別の課題で椅子を作る際にも椅子が重ねられたときにどう見えるのかを考えていきながら、モックアップを作って組み立てまで行います。

椅子のスタッキング考察

 

ここまできたら、最後のBIM実習に入ります。より建築に特化したソフトとしてAutodesk RevitとArchiCADの2つのBIMを、2つのグループに分かれて学びます。使用するソフトは違いますが取り組む課題は同じなので、ある種の競争意識が生まれ、グループ内の結束感が強まるように思います。学年の半分くらい、60名程度の学生がここまでのデジタルデザイン系授業をクリアして、3年生では各ゼミに配属されていきます。

BIM実習

BIM実習

図面の書き出し

図面の書き出し

BIM実習を受けた60名の学生

 

研究室でのプロジェクト学習

その後、3-4年生は、研究室に配属されます。これはうちの研究室の内容です。3年生は、デジタルファブリケーションの拡張版を行います。パビリオンを作ったり、道具を教えながらプロトタイピングをする方法を学びます。また、4年生で卒業研究をし、院生を含めた全員でプロジェクトに関わる活動をしています。

杉田さんの研究室プログラム概要図

杉田さんの研究室プログラム概要図

これは、3年生が作ったデジタルファブリケーションの活用例です。このようなパビリオンを作ります。

デジタルファブリケーションを取り入れたパビリオン

デジタルファブリケーションを取り入れたパビリオン

研究と学び

建築情報学系の研究室に属し、「様々なソフトに詳しくなる」では、不十分だと考えています。どんなソフトをどのように使い、社会に貢献するのかを各自で考えてもらうためには、実践を伴う研究やプロジェクトに関わる必要があり、それが出来れば学生は何倍も成長していくのではと考えています。

デジタルパブリケーションを取り入れたパビリオン

研究目的

たとえば、こちらの研究をご覧ください。
「Roomba:BIMとロボットの連携による清掃システムの開発」です。

Roomba:BIMとロボットの連携による清掃システムの開発

Roomba:BIMとロボットの連携による清掃システムの開発

ロボットとBIMの情報を使うことで、新しい維持管理が可能になるのではないかと研究しています。ロボットに建物内を走りながらいろいろな情報を取らせたり、ロボットが自分の動き方を理解しながら仕事をすることを想定し、BIMの情報でルンバを動かし、建物内の情報をBIM上で可視化する方法などを実践しています。

また、デジタルファブリケーションのプロジェクトとして、インテリアの仕事を実践しています。NC加工された木組みを、実際に現地で組み立てるなどを学生とともに取り組んでいます。学生がリアルに課題をみつけて学んでもらうことを重点に置いています。

まとめ

こういったプロジェクトを進めながら、産学連携や社会活動に、何かしらの新しい働き方が隠れているのではないか、と感じられてきました。こちらが、その概念図となります。

「新しい建築」と「新しい働き方」を繋ぐ、産学連携と社会活動、研究

「新しい建築」と「新しい働き方」を繋ぐ、産学連携と社会活動、研究

このイメージを検証しつつ、これからも学生とともに、「新しい建築」と「新しい働き方」を視点に、若者を育てていきたいと思います。
本日はご清聴いただきまして、誠にありがとうございました。

働き方について
オフィスがないということですが、開発の分担やコミュニケーションの方法はどのようになっていますか?

現在、ファウンダー4人+マイナーパートナー3人で運営しています。メール、電話、チャットで日々の業務を行っています。

少し脱線してしまいますが「The Mythical Man-Month」というIBMソフトウェア技術者兼プロジェクトマネージャーのフレッド・ブルックス氏が書いた書籍があります。あるプロジェクトに何人の人を投入すると一番効率的か計ったときに7人以上だと効率が下がってしまうという研究結果のようです。7人のチームのほうが、20人のチームより3倍速くなる!というのは驚きです。

人数が増えたときの一番のコストはコミュニケーションコストです。大きい会社にするには人手が必要だけれど、プロジェクトで考える場合7人がちょうどよいんです。

また、オフィスがないのも利点だと思っています。

決断するときは面と向かってコミュニケーションをとるほうがよいけれど、日常的な問題は離れているほうが「コミュニケーションを省く」癖がつくので問題自体に集中できるんです。

因みに、ここのカフェスペースはもう一人の開発者とミーティングするとき使っています。解決法がわからない問題は相手の様子を見ながらコミュニケーションをとるようにしています。

長谷川氏に指定されたブルックリンのお洒落なカフェスペース

長谷川氏に指定されたブルックリンのお洒落なカフェスペース

長谷川氏に指定されたブルックリンのお洒落なカフェスペース

新しいテクノロジーの可能性についてお聞かせください。

ARは必ず大きな波がくる技術ですね。ARの持っている特性は基本的に体感機能(英語でいうとKinestric Understand)の拡張です。

例えば、「5m × 2m」と言ったとき情報として分かっても体感できません。建築家は経験として体験できるけれど、多分一般的な人はなかなかできないと思います。AR はそれを乗り越えられる技術ということです。ARの技術を通して体感し、理解することができる。

現在リリースしているアプリにもAR機能は搭載されているんですよね?

はい。Morpholiro TraceにもMorpholio Boardにも搭載されています。

~Morpholio Traceの場合~
iPadカメラで映し出された現実世界上にMorpholio Traceに取り込んだ図面を映し出し、第三者にここからここまで歩いてみてくださいと体験してもらうことができます。体感してもらいスケール感を共有することで、「このキッチンのアプローチ狭いからもう少し広くしたほうがよいね」とその場で判断できます。また、Morpholio 上でパブリックと押すと、同じ空間にある複数のiPad(5台以内)で同じ図面・空間を見ることができます。

Morpholio Trace のAR機能

~Morpholio Boardの場合~
Morpholio Boardというインテリアデザイン向けのアプリは、家具を実寸大ARで現実世界に投影できます。AppleのARKitを利用しており、環境光レベルをちゃんと計算して、3Dモデルのテクスチャに反映されます。あたかもそこにあるかのように表現できるのはAppleのきめ細かい開発によるものですね。

Morpholio Board のAR機能

期待している次のデバイスは何ですか?

AR用デバイスが眼鏡になればもっと良いですね。

iPadは持ち歩きながらもコミュニケーションを取れるデバイスとしては良いけれども、まだまだベストなインターフェイスではありません。おそらくAppleグラスなどが発売される時には建築家がiPad上に書いた図面がそのままグラスに瞬時に反映され、見て歩いて体験することができるようになると思います。

今後搭載したい機能はどういったものですか?

建築の場合、CADがなくなることは絶対ないので、スケッチしたらAIによるオートメーションで図面やCADが立ち上がるというところまでいきたいですね。

発想したものや最終的なイメージができているのに、わざわざCADソフトをちくちく作りこまないといけない。Morpholioでは、初期の段階で、発想を図面や3Dデータに変換し、フィードバックできるものにしたいですね。

AIによるオートメーションの可能性も非常に高いのですね。
現在、具体的に搭載されているオートメーション機能があれば教えてください。

Morpholio Board内の3つのビジュアルモードを自動連携させています。コンセプトボード(Board Mode)、ワードボード(List Mode)、スプレッドシート(Cut Sheet Mode)
Morpholio Board内の3つのビジュアルモード

例えばコンセプトボードに1つのアセットをカタログデータから追加した際、ワード・スプレッドシートにも自動的に追加される仕組みです。今まではわざわざ3つ用意していたものをオートメーション化することで、デザインや発想に集中してもらいたいのが狙いです。手作業でやっている作業が利益を生むわけではなくデザイン検討をいかにプロダクティブに行えるかが重要です。

テクノロジーとどのように向き合っていますか?

ユーザーの役に立つアプリを作っている以上、テクノロジーの次の波を知っているかどうかは非常に重要です。ARもAIも大きい波であるのはわかっているがまだまだ本番ではない。恐らく、もう5年はかかると思う。ただ、波が来た時に乗りこなせられるかどうかは、日々新しいテクノロジーにちゃんと向き合い、準備を進めていたかで決まると思います。

なるほど、胆力を養うことが重要なんですね。新しい技術を盛り込みながら、Morpholioで解決したいこと、実現したいことはどういったことですか?

Morpholioで新しい技術を利用する目的は、バーチャル空間をつくることや、拡張現実を見せることではなく、リアルに見せることで理解度を高め、コミュニケーションの隔たりを取り除くことです。

図面を見せても理解度が50%だった場合、ARを利用したことで理解度が増す。Morpholioの最終的な目標は意思伝達を素早くし、発想を拡張することです。

今ってクライアントに「どんなイメージがありますか?」とヒアリングしたあと、持ち帰る場合が多く、コミュニケーションを断絶してしまいます。一か月後にデザインを持っていっても、何を話したか覚えてないことが多いので、あらためてデザイン図面を見ながらもう一度コミュニケーションをおさらいする。

長谷川徹氏

これがクライアントのいる場で、こういうことですかと瞬時にクライアントが考えていることをビジュアル化したらどうでしょう?クライアントも十分な情報量を持った状態で、納得して決断することができるのではないでしょうか?コミュニケーションをシャットダウンしないことがARでは実現できると思っています。

そして、時間軸も本当に大切。コミュニケーションがもっと速く、シームレスになれば、意思伝達に隔たりも生まれず、発想することに集中できると考えています。

貴重なお話ありがとうございました!

建築ビジュアライゼーションMeetUp第3弾の2つ目のセッションは、スペースラボ株式会社の工藤氏による『UE4でできる建築インテリアのインタラクティブな表現』

スペースラボ株式会社(以下、スペラボ)は、「3Dの新たな価値を常に作り出す」をミッションに、CGパース・動画・AR・VRコンテンツを制作している制作会社。
東京、名古屋、大阪、福岡にオフィスを構え、クリエイターだけで50人が在籍しています。

工藤 美紀 氏

スピーカーの工藤 美紀 氏は、設計施工、web site制作、パッケージデザイン、動画編集などの実務経験を経て、スペラボへ入社。
スペラボではCGパース制作や、Uureal Engine 4 を使用してのVR/動画制作など、内装建築インテリアをメインとしたCG制作業務に取り組んでいます。

工藤氏の自主制作作品

工藤氏の自主制作作品。海外のビジュアライゼーションのコミュニティサイトへ投稿するために作成したという。

展示会の案件

展示会の案件。VR用に作成。UV展開を意識して作成したという。

実際に、Unreal Engine 4 で制作されたイメージがこちら。

Unreal Engine 4 で制作されたイメージ

こちらも展示会の案件。元々はクライアントの要望で、「動き回れる」ようにUnreal Engine 4 で VR 用に360度書き出しをしたものですが、同案件のビルドデータを再利用し、映像作品として編集されたものが披露されました。

Uureal Engine 4 を導入すると、ビルドデータがあればそれをVRのようなインタラクティブな表現だけではなく、映像や静止画での書き出しなどへも転用が容易にできることが特徴とのこと。今回流された映像は、動線の設定と書き出しだけで40分程度だったそうです。

便利なブループリント

実案件でUureal Engine 4を使い出した工藤氏。
導入前は不安もあったようですが、Uureal Engine 4のブループリントを使うことで、その不安は解消されたそうです。

ブループリントとは、ノードベースのビジュアルスクリプティングツール。
C++などのプログラミング言語を使わずに、デザイナーやアーティストでも、3D空間にインタラクティブな動きをつけることができます。

ブループリント

工藤氏は、Uureal Engine 4の学習のしやすいポイントにサンプルが多いことをあげています。
たくさんのサンプルがジャンル別にweb講座に無料でまとめられています。
サンプルの中を見て、編集をすることができるため、容易に学習ができたそうです。

セッションでは、インテリアの3Dデータを使い、
・煙を出す
・クッションの色を変える
・画面にウィジェットボタンを表示させる
ところまでをブループリントを使用して実装するまでのデモ映像が披露されました。

セッションの様子

Uureal Engine 4 参考サイト
UNREAL ENGIN ONLINE LEARNING
https://www.unrealengine.com/ja/academy

ブループリント入門
http://api.unrealengine.com/JPN/Engine/Blueprints/GettingStarted/

分散ビルドの検証

またMeetUpでは、Uureal Engine 4 の分散ビルドの検証結果が披露されました。
分散ビルドとは、複数のPCを使って、ライティングなどのビルドを分散して、その時間を短縮することができます。

分散ビルド・・・どんだけ違う?
分散ビルド・・・どんだけ違う

1台のPCで単体でビルドをすると、1時間28分かかったものが、分散ビルドを使うと19分と大きく短縮されました。

「分散ビルドがあるのとないのとでは作業が変わるのでぜひ使ってもらいたい」というのも納得の短縮時間です。

セッションでは、分散ビルドの使い方が詳しく披露されました。

分散ビルド・・・設定の仕方

分散ビルドに必要なものは
・SwarmAgent.exe
・SwarmCoordinator.exe
の2つです。

Windowsでのファイルのありかは
PC ¥ (user name) ¥ Program Files ¥ Epic Games ¥ UE_4.21 ¥ Engine ¥ Binaries ¥ DotNET
(UEのバージョンによって変わります)

「SwarmAgent.exe」と「SwarmCoordinator.exe」は、分散ビルドをかけるPCと、分散ビルド先のPC両方に入っている必要があります。

分散ビルド・・・「SwarmAgent.exe」への設定

SwarmAgent.exeの設定

SwarmAgent.exeでは、どこのPCにビルドをむけるかの指示をします。
IPアドレス、もしくはコンピューター名を指示してあげます。

IPアドレスもしくはコンピューター名は以下の方法で取得することができます。

IPアドレスの場合は、コマンドプロンプトから「ipconfig」 打ち込みます。
コマンドプロンプトに「IPv4アドレス」が表示されるので、この値を設定してあげます。

分散ビルド・・・「SwarmAgent.exe」への設定

コンピューター名の場合は、「コントロールパネル」の「システム」から「フルコンピューター名」の値を取ってきます。

SwarmAgent.exeのsettingタブから設定を行なっていきます。

分散ビルド・・・「SwarmAgent.exe」への設定

CordinatorRemotingHostには、先ほど調べたIPv4アドレスか、コンピューター名を入れます。
AgentGroupNameとAllowRemoteAgentGroupは任意の名前でOKです。

コア数も設定する必要があります。
分散ビルド先のPCのコアをすべて使ってしまうと固まってしまって動かなくなるので、少し少なめに設定をします。

分散ビルド・・・「SwarmAgent.exe」への設定

SwarmCoodinetor.exeを開き、読み込んでいればOKです。

分散ビルド・・・「SwarmCoordinator.exe」へ

分散ビルド・・・注意点

便利なツールの紹介

セッションで工藤氏が実際に使っているツールも紹介されました。

最近使ったツール

Crazy Bump
Crazy Bump
http://www.crazybump.com/

Datasmith
DataSmith
https://area.autodesk.jp/column/tutorial/3dsmax-ue4-viz/01-whats-unrealstudio/

ANIMA
ANIMA
https://secure.axyz-design.com/en/anima

「Unreal Engineは需要が増えて、利用する場も増えてくるので、ぜひぜひ使って欲しいなと思います。」

Unreal Engine 4の実際の案件での利用方法や分散ビルドや案件で使用されているツールのご紹介など、見所満載のセッションでした。

ここでMorpholio Traceでどんなことができるか長谷川さんに詳しく聞いてみたいと思います。

Morpholio Trace

Morpholio Trace
iPad ProとApple Pencilを使い、設計図面や間取り図に寸法、画像イメージなど写し書き(トレース)をしながら顧客との円滑なコミュニケーションを促進するツールです。

Morpholio Traceはどういった場面で一番使われるんですか?

Traceはミーティングの場でよく使われています。iPadをテーブルに置いて、クライアントやディベロッパーと一緒に話し合いながら間取りを決められます。

僕はよく「精度の問題」と言っているんですが、間取りを考えるときにミリ単位は絶対必要ありません。「ここは21ミリで」と事細かく説明されてもクライアントは嫌になってしまいます。こんな家具がここの空間に欲しいことが意思疎通できればよいんです。CADや細かい図面が必要になるのは施工の段階ですよね。どんな情報が必要か、どんな情報を見せたほうがよいかは相手によって異なります。

Morpholio Traceの強みはなんですか?

紙だと書いたら消せないけれど、Traceだと図面データを拡大しながら、クライアントの前で図面上に書き込んだり、消したりできます。

また、他のイラストレーションツール(ProcreatやIllustrator)と比べたとき、スケールを測れる点がMorpholio Traceの強みです。

簡単な例だと
Apple Mapsから敷地候補の場所を検索し、そのまま敷地をiPad上に配置します。作りたいアイデアを、敷地に描き込んでいくと、簡単に敷地面積を出すことができ、「何平米だとこのくらいのコストがかかる」と即座に分かります。予算を上回っている場合は、線を一本ひいて面積を視覚的に減らし、「何平米になったから予算に収まりますね」と、数秒でクライアントの要望をiPad上に現実化できます。

あと、建築家がよく使う木や人など豊富なアセットが用意されています。敷地内のどこに木をおいたら良いか話す時、木のアセットを見せて、それを移動させて、緑色に色づける
この一連の行為をクライアントに見せることが重要なんです。

Morpholio Trace

重要とはどういうことですか?

線を描きながら、モノを配置しながら説明するとクライアントは具体的に理解しやすくなるんです。

人間の脳は不思議なんです。コロンビア大学の脳科学の授業で受けた内容なんですが、「30ミリ秒」というのは触れたことが脳へ伝達するのに必要な時間。例えば両肩を触ったときそのタイミングの差が30ミリ秒以内だったらわからないんです。「300ミリ秒」というのはイメージのビジュアルが脳へ伝達するのに必要な時間。つまりは、300ミリ秒以内だとコンセプトや概念がまだ伝わっていないことになります。

これが何を意味するかというと、例えばRhinocerosなどのデジタルツールを使って数値を入れて瞬時にパラメトリックな形成をしました!としても、見ているほうは何故こうなったか理解できないんです。

もちろん、建築家として経験値を積めば、プログラミングした内容がこういう結果になると理解できるようにはなりますが、初めて見るクライアントとしては分断された情報の中で何が起こっているかちんぷんかんぷんです。

なので、あえて「時間をかける」あえて「手で描いて見せる」ということがクライアントの理解を助けるためにも、ミーティングの場で必要なんです。

「手で描く」というインターフェースは古いわけではないんですよ。

長谷川徹氏とMorpholio Trace

面白いですね!
コロンビア大学で脳科学の授業で教わったことは役立っているんですね!

これに気づいたのは開発してずいぶん後になってからです。UIUXって最後にやるものってイメージがあるかもしれないけれどSteve Jobs的にいっても逆なんですよね。エンジニア的にこんな技術があるからこの機能を搭載しよう!ではなく、ユーザーが本当に必要なものは何で、どんな使い方をするのか?そのためにどういうツールであるべきなのか?を考える。

僕自身が建築家なので「ユーザーが必要なこと」からしかスタートできないのでこの10年そうやって開発してきましたが、「ユーザーが必要なこと」を見逃すと独りよがりなプロダクトになってしまいますよね。重要なのは逆算して考えることです。

2種類のイノベーション

もちろん逆もあり得ますよ。例えば電気や車。「顧客に望むものを聞いていたら、『もっと速い馬が欲しい』と答えるだろう」というヘンリーフォードの話にあるように、イノベーションはみんなに聞いてでてくるものではない場合もあります。

両方とも技術革新には必要ですが、ことMorpholioビジネスを考えると、iPadというイノベーションはすでにあるので、ユーザーインターフェスとこのデバイス間をいかにうまくデザインするかがキーになると考えています。

ユーザーから開発フィードバックはよく来ますか?

デジタルの有利な世界ですよね。要望やフィードバックはメールでバンバンきます。フィードバックの傾向が面白いんです。ランキングがはっきりしていて、要望が多い順に並べると明らかに右裾が長い分布になります。

トップ10はみんなが欲しいものですので、これらの要望をなるべく早くユーザーに届けられるよう優先的に開発しています。

現在のユーザー数ってどのくらいですか?

正直、具体的な数値は申し上げられないのですがダウンロード数は2億を超えています。
ユーザー数としても50万人は越えていますね。メールのやりとりができるので、ドメインアドレスからだいたいどういった会社が使っているか分かります。9割方、プロの建築家の方に使っていただいています。

日本の市場に対して期待することはありますか?

ある設計事務所で昨年iPadを大量導入したときにMorpholio Traceを採用いただきました。
日本は導入には時間がかかりますが、いったん導入するとロイヤルユーザーになる傾向があります。使用する企業や教育機関などが増えていくことは期待したいです。

また、日本の家具メーカーの方々とも連携していきたいですね。Morpholio Boardに搭載されているAR家具のカタログデータは非常に精度の高いモデルです。パートナーシップのレベルにもよるんですが、これらのモデルは弊社でAR用に3Dモデルを作成していますので、家具メーカーさんにとっても営業ツールとして利用してもらえます。

Morpholio Traceの提供方法に関して確認させてください。

基本機能が搭載されているMorpholio Traceは無料でダウンロードできます。さらに、機能を追加したい場合、APP内課金で機能を増やすことはできますが、すべての機能を無制限に、常に最新の状態で使用したい場合は1年間2200円のサブスクリプションタイプのPRO版を利用いただいています。

大量導入を検討している企業の場合、Apple Volume Purchase Programを使用し、必要ライセンス本数分を99$/1ライセンスで一括購入することも可能です。また、Mobile Device Management (MDM)を使用すると、キッティング作業にかける時間を削減できたり、Apple IDナシで一括にアプリを配布できたり、アプリの管理を行うことができます。教育機関における大量導入に対しても同じような形態での提供となります。
https://www.morpholioapps.com/traceb2b/jp/

Apple Volume Purchase Programで一括購入した場合、追加アップデートはどのように入手できますか?

サブスクリプションユーザーと若干タイミングはずれますが、アップデートは配布しています。ただ、プロユーザーにはすべての機能を無制限に、常に最新の状態で使用していただきたいので、Appleさんには大量導入の場合であっても(VPPやEDUであっても)サブスクリプションになるよう対応してほしいところですね。安定して低いコストで使えるサブスクリプションモデルはユーザー側もメリットですから。
*現状はVPPやEDUのサブスクリプションモデルはAppleで対応していないようです。

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〇MDM・VPPのご相談はこちらから
Apple専用の統合デバイス管理 「Jamf Pro」

〇Apple製品のご購入はTooへ
https://www.too.com/apple/

Morpholio LLC 長谷川徹 氏

長谷川さんの経歴についてお聞かせいただけますか?

法政大学デザイン工学部建築学科で建築家渡辺 真理教授のゼミに所属し、2003年春に卒業しました。その後、2003年9月からコロンビア大学院で建築学の修士課程を3年間で修了しました。コロンビア大学在学中もnARCHITECTSDiller Scofidio + Renfroといったさまざまな建築事務所でインターンを行い、2006年の卒業後、2011年まで自分のデザイン事務所を構え経営しました。

長谷川さんのデザイン事務所

Diller Scofidio + Renfroは、アップウェストサイドの線路を公園に改築した「Hight-Line」や、ハドソンヤード横にある屋根が動く建築物「The SHED」を設計した有名設計事務所

Diller Scofidio + Renfroは、アップウェストサイドの線路を公園に改築したHight-Lineや、ハドソンヤード横にある屋根が動く建築物The SHEDを設計した有名設計事務所

長谷川さんのように卒業してすぐに事務所を構える人は多いんですか?

あまり多くないと思います。僕はたまたま卒業とともに2006年からコロンビア大学で教員としても教え始めたんです。事務所かたわら、教員としてコンピューテショナルデザインを主に教えていました。パラメトリックやアルゴリズムといったことですね。

14年前からコロンビア大学ではコンピューテーショナルデザインを教えていたんですね!

コロンビア大学院建築学部の歴史を少し話すと、90年代にベルナール・チュミ(Bernard Tschumi)という有名な建築家がペーパーレス・スタジオを始めたのがきっかけで、彼の理念に基づき、大学でも手描きや図面は捨て、建築にデジタルを導入しましょうという流れになりました。

コンピュータを新しく導入しグレッグ・リン(Greg Lynn)氏やハニ・ラシッド(Hani Rashid)氏といった新進気鋭の建築家を教授に招き新しい建築学部を立ち上げました。90年代はデジタル建築第一世代から学び、00年代になるとMayaやRhinocerosといったツールが活躍した第二世代、2006年に僕がアルゴリズムやコンピューテーショナルの初代授業を受け持ったのが第三世代になるかと思います。

コロンビア大学

コロンビア大学

事務所を構えながら教員として両立するのは難しかったのでは?

教えることは興味あることだったので苦ではなかったですね。
あと時代ですよね。数十年前は資本金があって、クライアントがいて、様々なツールを用意する必要があったけれども、今の時代であれば、初期投資をあまりかけなくてもコンピューター1台あれば仕事ができる。ちょうどその移り変わりの時期だったんだと思います。

事務所ではどんなお仕事をされていたのですか?

デザインして建物を建てるというよりは、建築事務所からこんなパラメトリックのファサードをつくりたいけどツールがない!という要望を聞き、ツールを開発していました。要はコンサル的な仕事内容でしたね。

もう10年前になりますが、コロンビア大学ジャーナリズム学科の図書館の天井は、うちの会社でつくったソフトを使って建設されました。どのパターンが一番音を吸収するか音響に関してコンピューテーショナルをやったり、パネルのデジタルファブリケーションを行ったりしました。

Stabile Center, with Marble Fairbanks Architects
http://www.proxyarch.com/media.html
https://www.flickr.com/photos/proxyarch/3982081475/

なるほど。お客様のためにツール開発したコンサルティングの下地が、Morpholioの立ち上げに繋がったのですね?

コンサル業をやっていてわかったのがビジネスがスケールできないことでした。僕1人の脳みそから1つのプログラムを書くことはできても、100個の新しいツールを生成することは時間的に難しい。もちろん100人いればできるけれども、つまりは100人分の仕事を取ってこなければいけない。人を増やすこともできましたが、ビジネスをするにあたりスケールをちゃんと考えないといけないなと当時感じました。

Morpholioの開発に繋がるまでどのようなプロセスがあったのですか?

本当にタイミングですよねー。

建築業界の場合Win PCを使うのが当たり前だと思いますが、2006年に最初のiPhoneが出たときに、今のMorpholioのファウンダーの1人がiPhoneとMacを買ったんです。

例えば90年代、突如インターネットが生まれ、世界はウェブサイトが必要という流れがあったかと思います。同じ波が2007年にAPPストアが初めて出たときに来たんです。アプリという概念がなかった時代、iPhoneが出たことによって、アプリって何?よくわからないけれど欲しい!という需要の波です。

iPhoneのアプリ開発者はほとんどいなくて、でも様々なところからiPhone用アプリを作ってくれという需要があった。我々は建築畑の人だったので、アプリというビジネスをどう回してよいのか全くわからず…でも沢山の要望が降ってきたので、勉強しながらコツコツアプリ開発を行っていました。値段の付け方もわからないから時給制にしたり、アップデートの考え方もなかったりと試行錯誤でした。

2010年初代iPadが出たことによりMorpholioを作るきっかけに

Morpholioは建築家4人がファウンダーなんですが、2010年初代iPadが出たことによりデジタルツール(ハード側)の延長としてiPadが使えるなという感触を受けました。こんな大きいスクリーンをタッチインターラクションで簡単に動かせるんだ!と。Steave Jobsがプレゼンでやった「スワイプ」なんて本当に歴史が変わる出来事でしたね。iPadとの出会いがMorpholioを開発するきっかけになりました。僕ともう1人の建築家が最初のアプリの開発を開始しました。

最初のアプリ「Morpholio」開発秘話

MorpholioはMorphology (形成理論)+ Portfolio(ポートフォリオ)を合体させた造語です。2010年ごろ自分の作品(ポートフォリオ)を掲載する格好良いサイトがなかったので、まずポートフォリオを掲載するアプリを作ったんです。

もちろん、初めはダウンロード数も多かったんですが、すぐにこれはビジネスにはならないと気づきました。ポートフォリオって、転職するタイミングには使いますが頻繁に使うものではないです。こういったアプリは毎日使われないとビジネスにはならないんだと気づき白紙に戻しました。

次のアプリ「Morpholio Trace」が出来るまで

建築家が毎日することは何だろう?と考えたときに「スケッチ」だと思い浮かびました。当時スケッチはすべて紙ベースでやっていたんです。紙に赤線を引いてスキャンしてPDFで送る。あるいは紙を持参してコミュニケーションを取る、と非常に非効率でした。

先ほどのペーパーレス・スタジオに戻りますが、遡ること90年代、紙を無くそうという動きから始まったのがCADです。デジタル化しましょうという流れにインターネットの出現も合わさりました。さらに20年後の2010年には、インターネットがある、デジタルツールがある、そしてiPadが来ました!もう後戻りはできませんよね。Morpholio Traceの開発が始まったのがその頃です。

Morpholio Traceのプロトタイプは3週間ほどでつくりました。本当に初めは見た目が格好良くなかったのですが、Herman Millerにスポンサーになってもらい、Morpholio Traceプロトタイプお披露目パーティーを開いたんです。プロトタイプなので具体的に売ることはまったく考えていなかったのですが、出席した建築家から明日からすぐにでも使いたいと評価をもらいました。その時初めて「あーこれがソフト(アプリ)のビジネスなんだ」と気づきました。

デジタルが本当に求められていることとは?

何が求められていてどこにデジタルが役に立つのか本当の意味でそれまで理解していなかったんです。ちょっと成長しましたね。もちろん、コロンビア大学院時代デジタル建築学を教えていましたが、応用の仕方がまったく異なるんです。

コンピューテーショナル建築で教えていることはデザインをつくるプロセスの中で活用できることです。例えば、MayaやRhinocerosといったデザインのイメージをつくったり、アイデアを作るといったようなこと。

でもデジタルの強みはコミュニケーション側にもあったんです。「建築+コミュニケーション+デジタルツール」ってその当時ほとんどありませんでした。恐らくメールぐらいじゃなかったかな。

建築家が日々行っている描くという動作をコミュニケーションツールとしてデジタルで補完できたんです。

コロンビア大学 建築学科の写真

コロンビア大学 建築学科の写真
建築書・図面や歴史的にも有名な書物が所蔵されている

建築ビジュアライゼーションMeetUp第四弾 レポート Vol.1
『3ds Max ロードマップと建築ビジュアライゼーションの現状』

2019年12月に開催しました「建築ビジュアライゼーションMeetUp 第四弾」。
本日より、こちらを全3回にわけて、レポートいたします!

【Too主催】建築ビジュアライゼーションMeetUp第四弾 レポート Vol.1

【Too主催】建築ビジュアライゼーションMeetUp第四弾 レポート Vol.1『3ds Max ロードマップと建築ビジュアライゼーションの現状』

本講演では、建築ビジュアライゼーション業界の現状と、そこから予想される業界の未来を皆様と共有させていただきたいと思っております。 そして、その未来に向けて3ds Maxはどのように対応していこうとしているのか。

もともと建築業界の制作に携わっていた立場から、制作支援に回った吉田さん。
そこで見えてきた現状についてまずお話をいただきました。

オートデスク株式会社 3ds Maxテクニカル担当 吉田 将宏 さん

オートデスク株式会社 3ds Maxテクニカル担当 吉田 将宏 さん

今日、建築ビジュアライゼーション業界は過渡期にあり、大きな変革を迎えようとしています。
今日お集まりいただいた皆さんは、建築ビジュアライゼーション業界に携わる方や学生がほとんど。定員数を上回る100名近くの来場者からも想像できるように、非常に熱量が高い分野になりつつあります。

6年ほど前の話ですが、私が所属するメディア&エンターテイメントの部門では、「CGプロダクション」、「コンシューマゲーム」、「モバイルゲーム」、「アニメ」業界のお客様が多くを占めており、「ビジュアライゼーション(建築・製造)」業界のお客様の数は、そこには遠く及びませんでした。
ですが、その後5~6年でこの業界は急激な盛り上がりを見せており、今や新規のお客様数は6年前の倍以上。直近の四半期では、「アニメ」や「コンシューマゲーム」業界を上回る数字を記録しています。

なぜ業界で盛り上がっているのか??

何故建築ビジュアライゼーションを始める人が増えているのか?
私自身、最初は単純に業界の需要が伸びているからかと考えていたのですが、調べてみると興味深いことがわかりました。
建築ビジュアライゼーション業務を行う設計者」の数が増加していたのです。

もちろん、今までもそういった方はいらっしゃいましたが、ほんの数年前までは、設計業務と建築ビジュアライゼーション業務(パース制作など)はそれぞれ別々に作業者が存在し、役割がはっきり分かれていることが多くありました。
設計=2D、パース=3Dといったように、それぞれ専門性が異なるという、文字通り次元の違う壁が存在したからです。

設計=2D、パース=3Dといったように、それぞれ専門性が異なるという、文字通り次元の違う壁が存在した

設計=2D、パース=3Dといったように、それぞれ専門性が異なるという、文字通り次元の違う壁が存在した

しかし、近年の業界の大きな変化に伴い、その壁は設計者(2D)側の視点から見ると、比較的超えやすいものになりつつあります。
では、どんな変化があったのか。

①BIMの普及

まず1つ目に、BIMの普及があります。

BIMとは、設計業務をはじめ、建築ワークフローを大きく効率化させるソリューションです。弊社ではRevitという製品をご提供しております。
BIMには業務を効率化させる色々な要素がありますが、その中でも今回取り上げたいのが「3次元設計」です。

BIM導入による3次元設計

BIM導入による3次元設計

BIMを導入することにより、設計作業の過程で建築物の3DCGモデルが出来上がります。つまり、今まで3DCGに触れることがなかったような、2DCADで2次元の図面を作っていた設計者でも、簡単に3DCGのモデリングができるようになったというわけです。

BIMの普及が日本でも年々進んでいることは周知の事実かと思いますが、例えば、日本建築士事務所協会連合会が公開している調査結果によると、このBIMを導入している企業は全体の30%で、そのうちの約8割がここ5年以内にBIMを導入したと報告されています。(約6割が3年以内)
更に面白いのが、BIMを活用している方々の81.8%が、BIMをプレゼンテーション資料用に活用しているとの報告もあります。

これらの数字を見てみても、BIMの普及はここ数年で大きく進み、そしてそのデータは建築ビジュアライゼーションという分野でも大きく活躍しているというのがわかるかと思います。

②リアルタイム系エンジンの普及

2つ目が、リアルタイム系エンジンの普及です。

ゲームエンジンとか、リアルタイムレンダリングエンジンとか、名称は色々です。
「リアルタイム系エンジンとは何ぞや」という話をすると、話がややこしくなるので割愛しますが、これらのエンジンを使用することにより、静止画や動画、AR・VRや、インタラクティブ要素のあるコンテンツを作ることができます。

もともとは、ゲーム業界を中心に発達してきたツールですが、ここ数年これらのエンジンは建築業界でも普及が進んでいます。開発元各社も建築ユーザー向けのWebページを用意したり、建築でよく使われるような新機能を搭載させたりと、建築業界に向け、大きなアピールを行っています。

建築の分野でこれらのエンジンを使用する利点の一つに、「早く・簡単に・綺麗な」静止画や動画を作ることができるという点があります。特にこの「簡単に」というところがみそなんですが、つまりは、3DCGの知識があまりない方、今まで3DCGに触れてこなかった設計者の方でも、学習コストをかけずにビジュアライゼーションコンテンツを作ることができるという事です。

学習コストをかけずにビジュアライゼーションコンテンツを作ることが可能に

学習コストをかけずにビジュアライゼーションコンテンツを作ることが可能に

①BIM → 設計作業の過程で3DCGモデリングができる
②リアルタイム系エンジン → 簡単にビジュアライゼーションコンテンツが作れる

この2つの普及により、今多くの設計者の方がビジュアライゼーション業務に着手し始め、建築ビジュアライゼーションに携わる人の数は、年々増加しています。

ビジュアライゼーション専門職の仕事はなくなる??

さて、ここまでは、設計者がビジュアライゼーションを始めたことにより、建築ビジュアライゼーション業界の人口が増加しているという話をしてきましたが、もしかしたらご来場の方々の中には、「じゃあ、ビジュアライゼーションの専門職は仕事なくなるの?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。

誰でもパースが簡単に作れる世の中になったわけですから、そう思うのは当然かと思いますが、私は専門職の仕事がなくなることはないと考えます。現に私の目の前にいる皆さんは継続してお仕事されているわけですし。

ただ、なくなることはなくても、「求められること」が大きく変わってきます。これは、今の業界の流れを鑑みれば容易に想像ができます。
建築ビジュアライゼーション業界に限った話ではありませんが、今まで専門職が担ってきた仕事が、テクノロジーの進化によって、誰でもできるようになったわけですから、専門職の方々には、専門職にしか表現できない「価値」が今まで以上に求められてきます。

Cheaper Faster Flexibility

Cheaper Faster Flexibility

ではどのような「価値」が求められるでしょうか。
例えば、「より安く」「より早く」コンテンツを提供することも専門職の価値と言えるでしょうし、最近では、静止画、動画だけでなく、VRやARなども柔軟に作ることができるというのも、求められるところとしてはよく聞く内容かと思います。

しかし、私が弊社のお客様と話している内容の限りでは、ビジュアライゼーションの専門職の方々が一番求められる価値は、やはり「絵の品質」です。
最近ビジュアライゼーションをやり始めた設計者の方のお話を聞いていても「自分たちでもパースは作れるようになったけど、高品質な絵は自分では作れない。外注している。」といった話が出てきます。

こういった話からも分かるように、建築ビジュアライゼーション専門職の方々は今までより更に高い品質のコンテンツ制作が求められているというのが、業界の現状です。
そしてその需要は、BIM普及などによる設計者の業務範囲拡大に伴い、ここ数年で急激に伸びているというお話をここまでさせていただきました。

High Quality

High Quality

3ds Maxについて

業界の現状を共有させていただいたところで、皆様の多くの方にもご愛好いただいている弊社の3ds Maxがこの現状を受けて、これからどのようになっていこうとしているのかというお話を、ロードマップを交えてさせていただこうと思います。

まず、3ds Maxをご存じない方もいらっしゃるかと思いますので、簡単に製品の紹介もさせていただきます。

3ds Maxは、建築ビジュアライゼーション業界においては、3DCGパースが一般的になり始めた時代から、業界で最も使用されているCGツールの一つです。
主要CAD製品、BIM製品との互換性や、レンダリングエンジンとの連携力が強いこと、また、フォトリアルで高品質な絵が作れることが特徴的なツールです。

3ds Max ビジュアル作品01
3ds Max ビジュアル作品02

弊社の情報サイトAREA(英語)、AREA JAPAN(日本語)をご覧いただくと、初心者向けチュートリアルや、さらに使い込みたい人向けのコラム、ウェブセミナーなどの情報を配信しておりますので、よろしければ一度そちらもご確認いただければと思います。

AREA JAPAN powered by Autodesk

AREA JAPAN powered by Autodesk(https://area.autodesk.jp/arch_product_ad/

3ds Max & UnrealEngine4で建築ビジュアライゼーション
~データフォーマットDatasmithを使ったワークフロー~

3ds Max & UnrealEngine4で建築ビジュアライゼーション~データフォーマットDatasmithを使ったワークフロー~

3ds Max & UnrealEngine4で建築ビジュアライゼーション~データフォーマットDatasmithを使ったワークフロー~(https://area.autodesk.jp/column/tutorial/3dsmax-ue4-viz/

やさしい3ds Max -はじめての建築CG-(全45本 チュートリアル動画)
こちらは、Kvizにも寄稿している高橋真澄 さんのチュートリアル動画をまとめています。Kvizでも、高橋さんの講義は「わかりやすい!」と評判いただいています。

やさしい3ds Max -はじめての建築CG-

やさしい3ds Max -はじめての建築CG-(https://area.autodesk.jp/movie/3ds-max-architecture/

魅力的な建築CGのためのスキルとフロー
~3ds MaxとPhotoshopで作るモテパース~

こちらは中級者以上の方に。インカー・ドローイング株式会社の提供で、実際の現場フローに合わせた解説をいただいています。

魅力的な建築CGのためのスキルとフロー~3ds MaxとPhotoshopで作るモテパース~

魅力的な建築CGのためのスキルとフロー~3ds MaxとPhotoshopで作るモテパース~(https://area.autodesk.jp/event/webinar/architectural-cg/

3ds Max 建築ビジュアライゼーション ユーザ事例

3ds Max 建築ビジュアライゼーション ユーザ事例

3ds Max 建築ビジュアライゼーション ユーザ事例(https://area.autodesk.jp/case/#/0/

3ds Max ロードマップ

ここからは3ds Maxロードマップについて、時間の許す限り解説していこうと思います。
なお免責事項として、今回ご紹介するロードマップに関しましては、将来必ず新機能として搭載されるという事や、今後も継続的に開発を進めるという事をお約束するものではありませんので、あらかじめご了承ください。

注:パブリックロードマップの詳細、免責事項全文に関してはこちらをご覧ください。

モントリオールに在籍する3ds Maxプロダクトチームでは、3つのテーマをもとに開発を進めています。

RELIABLE PROCEDURAL SCALABLE

RELIABLE PROCEDURAL SCALABLE

①RELIABLE ~信頼性のあるツールであること
②PROCEDURAL ~非破壊的で高速な制作を実現するツールであること
③SCALABLE ~個人でも大規模なチームでも使いやすいツールであること

以上の3つです。

RELIABLE

RELIABLE

まず、信頼性というところで、3ds Maxプロダクトチームでは、お客様の意見をより製品に反映できるよう、開発拠点にお客様を招いて意見交換会を行ったり、3ds Max Ideasというフォーラムで、お客様の意見を積極的に取り入れる活動をしています。

この3ds Max Ideasは、お客様が好きなように3ds Maxに関する意見やアイディアを書き込むことができるフォーラムで、他のお客様がそのアイディアに対して投票することができる仕組みになっています。
投票数の多いアイディアの多くは、実際に新しいバージョンの3ds Maxに新機能として搭載されたり、アイディアを元に機能改善が行われています。

現在開発中の機能としては、マシーンラーニングを取り入れたUVマッピング機能や、ビューポート設定の簡略化、テクスチャ ベイク機能改善とUI改善など、より使いやすいツールを意識した開発を行っています。

PROCEDURAL

PROCEDURAL

非破壊的という点に関しては、機能としては、今までより綺麗に、お客様の意図する形で処理が行える自動、半自動の新しいリトポロジ機能の開発を行うとともに、Bifrostの対応に力を入れております。

また、群衆シミュレーションのpopulateの機能改善、Bifrostを利用した炎、煙、布のシミュレータの開発も行っております。

SCALABLE

SCALABLE

3ds Maxは、個人でも大規模なチームでも使いやすいツールを目指し、新しいパイプラインにも対応できるよう、開発を進めています。

例えば、次の標準中間フォーマットになると期待されているようなUSDへの対応や、パートナーシップによるUnityとの連携の向上、さらに新しいワークフローをもたらすと期待されているOmniverseに対応できるよう、開発を進めています。

詳しくは、先ほどご紹介したAREA JAPANの3ds Maxパブリックロードマップのページをご覧いただければと思います。

最後になりますが、本日はメーカーの立場から、普段皆様とお話させていただいている内容や、我々が所有している情報をもとに導き出した業界の現状を、皆様と共有させていただきました。

今後も業界の現状や未来を意識しつつ、情報発信や製品開発を行っていこうと思っておりますので、皆様今後ともよろしくお願いいたします。

本日はご来場いただき誠にありがとうございました。

空間体感の表現 ~「見る」から「感じる」へ~
イベントレポートVol.4:ライフスタイルを技術に合わせる時代へ -「MRデバイス」元年到来 –

さて、ここまで技術に合わせた進化を見てきましたが、ここからは登壇者お2人より未来について語っていただきました。
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みなさんは、先の記事で扱った「MRデバイス」を、日常で使うようになる日々がくることについて、想像はできますか? こちらは、ヘッドセットをライフスタイルの中で使う、という新しいコンセプト提案になります。

新しいファッション・コンセプトの提案

新しいファッション・コンセプトの提案

現在、5Gの進化により、自動運転が実現する未来が、そう遠くないことは少しずつ想像できるようになりました。「車が移動手段からサービスに変わる」ように、劇的に日常を変える瞬間が、ライフスタイルでも起こり得る可能性が見えてきました。そのきっかけが、Microsoft社が開発したMRグラス「HoloLens」だったのです。

技術がライフスタイルに合うのを待つのではなく、ライフスタイルを技術に合わせていく。デバイスをつけても格好良い「アウトフィット(特別な服装)」を創る、という視点が、今生まれつつあります。
テクノロジーがブレイクし、ライフスタイルに溶け込むとき、このような「ヘッドセットに似合う髪型・服装を選ぶ」という捉え方ができるようになります。

「ヘッドセットに似合う髪型・服装を選ぶ」

「ヘッドセットに似合う髪型・服装を選ぶ」

この技術がライフスタイルの変革を生んだケースとして、過去の代表的な例がソニーの「ウォークマン」です。ウォークマンができるまでは、街中で音楽を聞くスタイルは存在しませんでした。
さらに、技術革新を経て、「iPod」「iPhone」がでたことにより、「ファッション」として音楽を持ち歩くことを可能にしました。

以前は、食べ物の写真を撮って全世界にシェアするという日常は想像できなかったと思います。ファッション起点において、潜在的な市場がすでに目の前にあり、「空間を着る」という視点でライフスタイルを変えていける可能性に注目が集まっています。エンターテイメントやゲームといった既存の市場から、「体験をデザインする」ことに、新しい領域が見える時代の到来です。

「空間を着る」

「空間を着る」

空間を創る建築業界と、空間を「デザイン」するVR業界

近年、現実世界の建物自体が、センサー技術の発達により、インターフェース化しています。デジタルサイネージにより、人のインターフェースへのアクションが変わってきているといえるでしょう。
空間自体をインターフェースとして使いながら、現実世界とコンピュータの世界をつなぐ空間が増えています。物理的では、できなかった表現が可能になっているのです。

例えば、現実の店舗に来店し、そこでデバイスをはめるとVRの世界が展開される、といったことが街中全体で行われる流れがくるのでは、と考えています。未来を待つのではなく、街がMRを使用して近づいてくる。そんなプロジェクトも、すでに始動しています。こちらは、「MR×街」をテーマに、渋谷区長・長谷部健氏がインタビューに答えている動画です。

情報が視覚化されてみえる世界では、「文字情報」がグラフィカルに、よりデザイン的に表現できるようになります。建築分野だとサインもデザインになりますが、バーチャルリアリティの世界でも、文字や空間にデザインを表現する領域がある点で、同じことがいえるようになります。

空間情報に溶け込んだときに、情報を取得する方法が変わり、これがさらに未来になると、脳に直接情報が伝達させる時代が訪れるでしょう。エクステンデッドなリアリティが面白い未来が、すぐそこに近づいてきています。

「MR×街」 TIME MACHINEチームによる渋谷区を舞台にしたMRプロジェクト

「MR×街」 TIME MACHINEチームによる渋谷区を舞台にしたMRプロジェクト

空間体感の表現 ~「見る」から「感じる」へ~
イベントレポートVol.3:xRが人にもたらすもの

引き続きPsychic VR Labの山口さんより「日常にxRが入り込むと、人はどのような影響を受けるのか」事例やプロダクトを中心に紹介いただきました。

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もともと、最先端の技術であったVRは、現在はもう、日常に入り込んできています。スマホをかざすとARで情報が見えるようになり、地図さえも、ARでサポートできる状態になりました。さらに、VR上で日常を過ごす人、いわゆるVtuberも盛んになってきています。

スマートにスタイリッシュに、VRを瞬時に体感できるようになれば、今後、技術のブレークスルーはいきなり始まる可能性もあります。

例えば、Keiichi Machidaさんは、アート作品として、日常の世界の中に広告を表示させました。

Keiichi Machida

Keiichi Machida

また、WIREDで特集された「ミラーワールド デジタルツイン」は、現実世界のコピーをつくって、そこから生まれるものを表現したものでした。

ミラーワールド デジタルツイン

ミラーワールド デジタルツイン

5年前ではSFの世界だと思われていたものが、現実に技術の進歩により大きく前進しました。その分岐点は、『HoloLens』の発表です。HoloLensは、Microsoftが開発したヘッドマウントディスプレイ(HMD)方式の拡張現実ウェアラブルコンピュータです。現在、「HoloLens2」が発売されましたが、値段としては高額であるため、まだ利用用途はビジネス向けに限られています。

HoloLens2

HoloLens2 (URL:https://www.microsoft.com/ja-jp/hololens

しかし、スマホをつなげて確認ができる「眼鏡型デバイス」が現在登場を控えており、香港に拠点を置くARデバイスのスタートアップMAD Gazeが開発した75gの軽量MRグラス「GLOW」や、nreal社が499ドルで2020年初旬発売を予定する商品など、すでに複数の安くておしゃれなデバイスが発表されています。
もはや、業務用としてだけでなく、街中でMRデバイスをつけて歩ける時代は、もう2020年より早々に訪れるのではないかと、言われています。

MAD Gazeが開発した75gの軽量MRグラス「GLOW」や、nreal社のMRグラス

MAD Gazeが開発した75gの軽量MRグラス「GLOW」や、nreal社のMRグラス

空間体感の表現 ~「見る」から「感じる」へ~
イベントレポートVol.2:xRを通して、体感をストーリーに乗せる

バーチャルな世界は、言うなれば「シバリのない世界」です。
コンピューターグラフィックス内の世界には、重力がないため、自由度が高くなります。
場所と時間を超えて、あっという間に違う場所へ、パラメータで違う時間に飛べるようになります。

体感を一つのストーリーに乗せて表現することで、現実とは違う新しい体験をしている感覚が生まれるのではないか、という考えです。実在しないモノと情報に、実世界が融合する。その実例を、山口さんに紹介いただきました。

山口 征浩(Psychic VR Lab 代表)

山口 征浩(Psychic VR Lab 代表)

Psychic VR Labが手がけた「STYLY」と「NEWVIEW」

「STYLY」というサービスは、「Free your inner world」というフレーズ通り、VRを使って自分の内面を開放し、新しい表現を創造するための、アーティストに向けたプラットフォームです。

STYLY

STYLY (URL:https://styly.cc/ja/

クラウド上でVRやMRを構築できるプラットフォームのため、サーバーにアクセスし、マウス操作で構築が可能です。世界中に配信することや、多人数で体験することができます。重きを置いているのは、「どのような世界観を作りあげるか」です。サービスを提供するだけでなく、良いコンテンツを作っていくことを促進しています。

また、「NEWVIEW」という3次元空間での新たなクリエイティブ表現と体験のデザインを開拓する実験的プロジェクト/コミュニティも発足しました。

NEWVIEW

NEWVIEW (URL:https://newview.design/

バーチャルリアリティを使った新しい表現を通して、文化をつくる活動を日本はじめ世界で行っています。

「体験デザイン」として、総合芸術のxRを学ぶことを目的として作られたこちらのコミュニティの参加者は、エンジニアだけに留まらず、放送作家、ファッションデザイナーなど役職の垣根を超えて参加されているため、テクニカルな話だけでなく、表現の話にまで多岐に及ぶため、大変面白いコンテンツが展開されています。

xRでカルチャーを生み出す

そもそも、このSTYLYを始めたきっかけは、一人の女性の想いを形にすることからでした。

2015年、ファッションデザイナーの中里 周子さんから、「私の作った服は、海の中に飛び込まないと買えない状態にしたい。それか、宇宙の中で売りたい」という全く違った発想で彼女から相談をいただきました。イマジネーションを広げていくなかで、「重力の壁など制約を取り払うことでできないか、VRがその表現ができるのでは?」となり、『ISETAN宇宙支店 -わたしたちの未来の百貨店-』を立ち上げました。

ISETAN宇宙支店 -わたしたちの未来の百貨店-

ISETAN宇宙支店 -わたしたちの未来の百貨店-

ただし、こうした発信には、コンセプトを理解してもらうことが必要です。ファッションは、自由な表現ができます。「VR」という表現で新しい世界観を作るのであれば、それこそ、新しいカルチャーとして生み出す必要がある、という使命感もあいまったかもしれません。

クリエイティブな感覚の方は、こうした話に対して興味をもって聞いてくれるかもしれませんが、xRの企画をどのようにすれば理解してもらえるのか、まだまだ初期段階で悩むところではあります。

今までの延長線で話をしたほうが話は早くなりますし、理解も得られやすいかもしれません。しかし、そこには、新しいものの本質はないと考えています。

コミュニケーションツールである「LINE」が、対面の延長線にないことも一つの事例です。今までの延長線上では理解できない未来に、テクノロジーが使われて行くことに対して、ちゃんと向き合わせないといけません。

空間体感の表現 ~「見る」から「感じる」へ~
イベントレポートVol.1:xRとは??

2019年8月に開催されました、「JARA 2019 東京展ギャラリートーク」。
本日より、こちらを全4回にわけて、レポートいたします!

JARA2019 東京展ギャラリートーク 空間体感の表現 ~「見る」から「感じる」へ~ 8月28日(水)

JARA2019 東京展ギャラリートーク 空間体感の表現 ~「見る」から「感じる」へ~ 8月28日(水)

まず、お話いただいたのは、大成建設株式会社の山﨑さん。
「xR」という技術を取り入れた、建築ビジュアライゼーション表現を学びます。

山﨑 信宏(大成建設株式会社一級建築士事務所)

山﨑 信宏(現在の所属:大成建設株式会社 設計本部設計戦略部 クリエイティブ・デザイン室)

xR = x Reality

xRは、仮想世界と現実世界を融合させるための技術や概念の総称、と捉えられます。

xとは、未知数を表す記号「x 」を指します。そもそも、VRの実体験は、「仮想空間体験」と捉えられます。ただし、あくまで「体験」であり、「体感」とは別物です。

体験と体感、この2つは似ていますが、現実には違うものなのでは?という問いから、xRは始まりました。数学的アプローチによって、体験は体感の積分をしていくと出てくるものと言われています。

体験=体感の積分値

体験=体感の積分値

ここではまず、xRに関連する4つの仮想体験技術を確認しておきましょう。

①VR = Virtual Reality

「仮想現実・バーチャル空間」と呼ばれ、「目の前にある空間とは『異なる現実』を体験できる」技術になります。良くイメージされるのは、VR用のゴーグルです。こちらを装着することで、現実とは別の世界を体験できるようになります。パラレルワールドの元になった概念で、最近ではコンサートの映像にVRを取り入れて、自宅でLIVE体験ができるなど、用途が広がっています。

②AR = Augmented Reality

「拡張現実」と呼ばれ、VRと違う点として「現実の空間に『新しい追加体験』を提供する」技術になります。日本でも社会現象になった「ポケモンGO」もAR技術を用いたコンテンツとなります。スマートフォンのカメラを通した景色の中にポケモンが登場するという、自分たちの現実世界にゲームのキャラクターが現れる感覚。これが、ARの世界です。

③MR = Mixed Reality

「複合現実」と呼ばれ、現実空間と仮想空間を混合し、現実のモノと仮想的なモノがリアルタイムで影響しあう新たな空間を構築する技術全般を指します。ARと違う点として、現実世界の形状(部屋の形やテーブルの位置)などをデバイスが把握し、それらにデジタル映像をぴったりと重ね合わせることができます。

④SR = Substitutional Reality

「代替現実」と呼ばれ、過去に撮影した映像とリアルタイムを融合して投影することで、過去の出来事を今目の前で起きているかのように、錯覚を引き起こさせる技術です。

わかりやすく言い換えると、VRの仮想現実を、SR技術を用いることにより、実際の現実と区別できない状況にまで取り入れることができます。視覚や聴覚だけでなく、触覚なども組み合わせて使うことが可能になると言われており、まだ実験段階にありますが、実用化されることで、ヘッドマウントディスプレイを外すまで空間の判断ができなくなるような、まさに「現実の置き換え」が可能になります。

VRは、ここ数年で一般化してきている傾向にありますが、まだまだxRの概念も含め、日常で取り入れていくには至っていないのが現状です。
今回のギャラリートークでは、xRの新しい概念について、話を進めていきたいと思います。

ブラさず伝える!〜デザインアライアンスのためのVisualization(視覚化) & Verbalization(言語化)〜

本日は2018年10月12日に開催されました、弊社Too主催のデザインイベント「design surf seminar 2018 -デザインの向こう側にあるもの-」にて、ご登壇いただきましたセミナーレポートをお届けします。
※本記事は、design surf 特設サイト レポートページからの引用となります。→元記事はこちら

ブラさず伝える! デザインアライアンスのためのVisualization(視覚化) とVerbalization(言語化)01

design surf seminar 2018

日本を代表する建設会社お二人のクロストーク

竹中工務店様から吉本和功さん、大成建設様から山﨑信宏さんがご登壇。完成前の建物をビジュアライズ(視覚化)して、クライアントにイメージや提案の良さをわかりやすく伝える、そんな伝えるプロフェッショナルの二人によるトークセッションとなりました。

竹中工務店 吉本和功氏 大成建設 山﨑信宏氏

スピーカー:竹中工務店 吉本和功氏(左) 大成建設 山﨑信宏氏(右)

建築というモノづくりは規模が大きく、一品生産。長期間にわたるプロジェクトのため関わる人数も多く、そこにはさまざまな立場の人が登場します。テーマは、チームの意識合わせに大切な「伝える」ことです。

コストに対するバランス意識

最初に建築業界での仕事の進み方を紹介していただきました。ゼネコン(総合建設業)には設計、技術、施工という大きく3つの部門があります。最近は共同企業体として、設計事務所とゼネコンで仕事を受ける案件もあるそうですが、一社単独で建物の企画設計から建設まで請け負えるのが特徴です。だからこそ、設計と施工(現場)の仕事は切っても切り離せません。

VEとは機能や性能をアップしながらコストは抑え、建物の価値を最大にする考え方

VEとは機能や性能をアップしながらコストは抑え、建物の価値を最大にする考え方

次に、建築設計の仕事で必ず求められる、機能や性能をアップしながらコストを抑えて建物の価値を最大にする『VE(Value Engineering)』の考え方が紹介されました。設計者はデザインや仕様だけでなく、作り方でコストを抑えられないか検討しながら設計します。「設計者が主体性を持って技術開発部門や施工部門と対話しないと、なかなかVEは達成できない。」と、さっそくコミュニケーションの重要性に触れます。セッションでは「コンセプト決め」「社内プレゼン」「提案プレゼン」など、各場面で心がけるコミュニケーションについて話が展開しました。

ブレないためには、チームコミュニケーションが重要

山崎さんは、初期段階でのフラットな議論が、コンセプトがブレないために必要だと力説。まず、相手を否定せずにアイデアを膨らませるブレインストーミングをして、そこから「本当に必要なものは何か?」を、みんなで考えて削ぎ落とし、コンセプトを決めます。

「コンセプトという向かうべきゴールを共有することは、『そのプロジェクトがいかに面白くワクワクするか』を共有するということ。この共有はチームのモチベーションにもつながる。」という言葉も印象的で、吉本さんもこれに頷きつつ、「最初にコンセプトをしっかり設定できると、案がまとまって関係者と振り返ったときに最終判断がしやすくなりますね。」と応じました。

多様なビジュアライズのテクニック

吉本さんからは、ビジュアライズでのコミュニケーションや、その工夫について話がありました。設計図で空間や仕上がりをクライアントに伝えることは難しく、その際にビジュアライズ(視覚化)が活躍します。

ときには図面がない中でイメージづくりが依頼されることもあり、その際は漠然としたイメージから、建物のボリューム感、用途、細部の形状、と徐々に掘り下げて具体化していくそうです。人によって同じ言葉でも想像するイメージが違うため、やりとりはさまざまな画像などを参照して、表現につながるイメージを見ながら対話を重ねます。

リアルなCGパースでは素材感や光のあて方ひとつで、クライアントの受ける印象がガラッと変わる

リアルなCGパースでは素材感や光のあて方ひとつで、クライアントの受ける印象がガラッと変わる

またフルカラーで細かくイメージ図を作ることもあれば、あえて色を抜いたモノトーンのイメージ図に素材見本を提示し、「お客様が頭の中で白黒の絵と、実際の素材感をブレンドして想像してくれる。」という視覚に頼らない方法も、伝えるためには有用なやり方だと紹介されました。

パースの描き方や色彩感覚には文化の違いも影響するそうで、他国の生活環境や文化、慣習をリアルに体験しない限りはなかなか想像が及ばないことがある、というエピソードにビジュアライズの世界の奥深さを垣間見ました。

思いを伝えるためにできること

「提案書はラブレター」「パースはお見合い写真」と話す山崎さん。提案プレゼンでは「いっしょに仕事がしたいと、見た人に感動や共感してもらうことが必要」だと語りました。

ワクワク、実現したい、一緒に仕事がしたいと感じてもらうこと

ワクワク、実現したい、一緒に仕事がしたいと感じてもらうこと

ビジュアライズ以外の伝えるテクニックについて、さまざまな角度から紹介されました。提案プレゼンの前には、クライアントに提出する提案書の中で、言葉をしっかり組み立てます。セッションでは「読みやすい」「わかりやすい」文章を作成するための掟について、実例を挙げて解説していただきました。どれだけ多くの人が携わっていても文章は一人格に整えること、といった指摘はすぐに真似したいポイントでした。

また、クライアントに思いを伝えるための工夫として、プレゼンを印象付ける提案ツールも事例とともに紹介されました。

建築の仕事におけるコミュニケーションの重要性

吉本さんが日頃ビジュアライズする上で考えているのは、「どんなに素敵なCGパースができても、お客様の要望にマッチしないとまったく意味をなさない。」ということ。コミュニケーションが不足していると、本来伝えたいところが表現されずにブレてしまいます。「『何を伝えたいか』が原点」と話します。

山崎さんは「ブレるタイミングが大事」とのこと。「最近の建築は複雑化、多様化していて、ひとりでは手に負えないと思います。大人数が関わることは多様なアイデアがあるということで、これは喜ばしいこと。そのポテンシャルを活かすためにも、期限ギリギリではなく、早い段階からいろんな意見をもらって話し合うことが大切。」だとまとめました。

会場では多くの方がメモを取りながらお話を聞いていました

会場では多くの方がメモを取りながらお話を聞いていました

貴重な実例が数多く登場したトークセッション。価値観を共有しながら、チームを同じ方向に向かわせるために、「いつ」「誰に」「どのように」伝えていくのか。大きなモノづくりのためのコミュニケーションについて、伝えるためのビジュアルとコトバを例に、わかりやすく語っていただきました。