第3話 シンテグレートとヴィックのお仕事実例 -【業界インタビュー Vol.6】シンテグレート合同会社 & 株式会社ヴィック


第3話 シンテグレートとヴィックのお仕事実例

槙田
槙田
シンテグレートさんはBIMのどこの工程のどんな仕事をしてるかというのを聞かせていただいただきたいです。
BIMでできることの全体に関わっています。我々のクライアントは、アトリエ系設計事務所、組織系設計事務所、ゼネコンや建材メーカーなどです。最近は、土木設計会社ともお付き合いがはじまっています。
渡辺健児さん
渡辺さん
あいこ
あいこ
さまざまな業態の方たちですね。
あと、建築ってファサードは別に扱われることがしばしばあります。複雑な形のファサードは、専門技術が必要だから工事業者も違います。ゼネコンさんがやるときもあれば、もっと得意な業者に頼むっていうのがあります。その業者さんたちとも仕事をします。
渡辺健児さん
渡辺さん
槙田
槙田
なるほど。

あとは、デベロッパーさんとメーカーさんもうちのクライアントになります。
例えばメーカーさんだと素材の自動設計ツールをつくりたいっていうのをお手伝いしたり。VRベースのデジタルシミュレーションツールをうちで開発したりするケースがあります。

業界の主たるプレーヤーをクライアントにしています。
事業者がいて、アトリエがいて、デザイナーがいて、ぎちぎちの設計をやる人たちがいて、建てる人がいて、ファサード専門業者さんがいて、材料つくる業者さんがいる。

BIMを活用することによって、これらをつなぎ、データ連携を図っていく。このことが重要と考えています。我々が目指すのは、すべての連携をスムーズにし、業界としてしっかりBIM化し、効率よくいいクオリティーのものをつくるということになります。

渡辺健児さん
渡辺さん
槙田
槙田
これだけの関わっている人たちが連携を取れたら、作業工程はスムーズになりますね。
あいこ
あいこ
さっきの車のメーカーさんの話みたいに、建築業界全体が一体感をもって出来ればっていうことですね。
そうです。
渡辺健児さん
渡辺さん
弊社の行うコンサルティングは、テクノロジー(BIM)を活用し、全体をコーディネートし、またサポートするようなイメージなります。
小西恵一さん
小西さん
アウトプットは、基本設計・施工図に関わるもの、製作図(1個1個のパーツ図のバラ図)・竣工モデル・積算などがあります。このほかにも、CGパース・VRなどもあり、クライアントのニーズに合わせていきます。それに対してインプットは図面だったり、モデルだったり、もしくはExcelの情報だったり、あとは法規などもあります。
渡辺健児さん
渡辺さん

ヴィックの事業内容

インプットデータをいろいろ絡めて、ガチャガチャコンピューテーションして、お客さんが欲しいアウトプットを出すというのがうちの仕事になります。
こういう意味ではシンテグレートとヴィックの境目は全然ないと考えています。クライアントは何を要望しているのか、インプットとして何を用意していただけるのか、それを元に我々はこんな対応や作業ができ、こんなアウトプットが出せますよ、と提案する。
渡辺健児さん
渡辺さん
あいこ
あいこ
お仕事の依頼がきて、その内容次第でヴィックがやるかシンテグレートがやるか決めるって感じですか?
そうですね。例えばヴィックの2013~2014年の仕事。坂事務所さんの静岡県富士山世界遺産センターのプロジェクトでは、私がパースを製作しました。坂事務所さんが見事コンペを勝ち取りました。
渡辺健児さん
渡辺さん
あいこ
あいこ
あ!コンペだったんですね。
その後、逆さ富士の複雑な建築物を施工するためのサポート、施工BIMの依頼がありました。
おそらく、パース描いた本人がBIMのサポートをするケースというのは、あまりないことだと思います。
3Dデータを活用し、パースをアウトプットする、3Dデータ(BIM)を活用し施工のサポートをする、アウトプットの形態は違えど、適切なアウトプットをするということは、ある種同じではないかとも考えました。
渡辺健児さん
渡辺さん
槙田
槙田
一緒と言えるのが凄いです!
弊社には、適切なソリューションを提供するために、様々な技術をもつエキスパートがいます。私が全てをできるわけではないので、チームとして、アウトプットしました。
渡辺健児さん
渡辺さん

富士山世界遺産センター/佐藤工業

デザインは、簡単なモデルだけでも成り立つことがあります。デザインがわかるモデリングをして、ぐるぐる回して検討して、パースにするための情報があれば足りることもあります。
でも施工者、要するにつくる人たちはそれでは建築することができません。ネジ1本までどうするのかっていう情報を全部検討しないと。特にこういった形の建築の場合は、二次元では不可能にちかいことです。
渡辺健児さん
渡辺さん

富士山世界遺産センターの素材リスト

モデルに鉄骨や木の断面の情報も入ってる。「ここが干渉しています。どのようにしますか」というのを施工会社と協力会社と坂事務所さんたちと日々一緒に話をしながら、モデルで一つ一つ解いていきました。
渡辺健児さん
渡辺さん
確認して、A案がいいのかB案がいいのか、はたまた違うのか検討するということですね。
小西恵一さん
小西さん
格子状になってる木は、片側で約3,500個の違う形で構成されています。1個1個これ微妙に形が違います。これを誰かが、データにしない限りはつくることができません。加工機はデータを読み取ることによって、はじめてアウトプットできるからです。
渡辺健児さん
渡辺さん

格子状になっている木の図面

3,500個の微妙に違うデータは、1個1個手でデータをつくっていきません。このときはRhinocerosとGrasshopperを使用しました。
どういうふうにいくつ並べれば効率がいいのかという、いわゆる歩留まりの計算などのシミュレーションをしました。
渡辺健児さん
渡辺さん

木材の加工手順のモデリング

加工機に木材をセットし、どこをどういう順番に加工するかっていう情報がないと機械は動きません。
木の形プラス、次ここを切ってください、次こういうふうな形で切ってくださいってデータを付加しないといけない。こういうことも、我々がプログラムを組んで自動的にモデリングを出来るようにしていきます。
渡辺健児さん
渡辺さん
あいこ
あいこ
ふぇー!賢い!!この絵は、プログラムを可視化してくれたってことですよね?
そうですね。水色のところが切る指示ですね。
渡辺健児さん
渡辺さん
あいこ
あいこ
すごいなぁ
こういうことがあって、初めて木の加工業者が加工機を動かすことができます。モデルがあって、そこに何をどういう順番で加工するのかという情報が必要です。これもBIMの一例です。リスクがあるから、そのリスクを可視化するってことになります。
渡辺健児さん
渡辺さん
コンピューターを活用して、いかに合理的にやっていくかっていうことになります。
小西恵一さん
小西さん
槙田
槙田
BIMをやるとき、どんなツールを利用していますか?
この時はCATIA++Rhino+Grasshopperになります。構造だけではなく、必要な検討個所を全てモデル化して、プラスいろいろな情報を紐づけて、施工及び制作に役立てました。
渡辺健児さん
渡辺さん
Mt.Fuji / Shigeru Ban Architects 2014

Mt.Fuji / Shigeru Ban Architects 2014
※ヴィック ウェブページより

槙田
槙田
コンペのパースの段階のときは、モデルとか設計図とかある状態で始まったんですか?
パースの段階では、Rhinocerosでデータをもらいましたね。ラフなモデルで、それを3ds Maxに持っていっていろいろとデフォルメしながらV-Rayでレンダリングをかけてパースを仕上げました。
ただ、坂事務所さんは抽象的な雰囲気が好きなので、最終的にはPhotoshopでかなりガチャガチャとしました。
渡辺健児さん
渡辺さん
槙田
槙田
鉛筆で描いたような表現ですね。
富士山の案件では、抽象的な雰囲気でアウトプットしました。一方で、リアル系のパースも描きます。
クライアントのニーズでどちらか選択する場合もあれば、コンセプトを読み解き、我々から提案する場合もあります。
それはお客さんのニーズとこっちの提案で今回のコンセプトではこういう表現がいいんじゃないですか、みたいなやりとりはします。
渡辺健児さん
渡辺さん
あいこ
あいこ
どちらにせよ最終的な絵作りは3ds Maxに持っていってやるっていうことですか?
そうですね、3ds Max+V-Rayを使用することが多いです。
渡辺健児さん
渡辺さん
ヴィックのビジュアライゼーション一覧

※ヴィック ウェブページより

ヴィックのビジュアライゼーション、シンテグレートのBIM、両方ともアウトプットの1つという考え方は言われてみるとたしかにそうだなと思いました。そんなフラットに考えている渡辺さんにきっとお客さんもとても魅力を感じますよね。

そして実際のお仕事の実例を見せていただいて、技術の進歩で時間とコストも削れる意味がわりました。たしかに3,500個の木材を人間が一つずつつくって組み合わせるなんて、気が遠くなる作業お金がいくらかかることやら。現実的じゃないですね……

銀座とか表参道などの形状が複雑なデザインのビルにも、シンテグレートさんのファサードBIMの技術が多数で活躍されているそうです!残念ながら掲載できない実例もありましたが、ものすごい技術を駆使して複雑な建築物がつくられていく内容は無知な私でもわくわくしました。
技術を駆使することで、コスト的にも実現不可能だった複雑な形状のデザインもできるようになってきて、高度な技術を必要とするファサード案件もシンテグレートさんはどんどん増えてるそうです。

Innovation in Techniques Award 2017の大賞トロフィー

Innovation in Techniques Award 2017で大賞を受賞したそうです!(端的に解説していただきましたが、ビルディングスマート韓国というBIMの世界標準を示している団体の『あなたたち、すごいことやってるね』っていう賞だそうです♡)

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