建築ビジュアライゼーションMeetUp Vol.1 イベントレポート (1)『建築CGアニメーションの魅力』

建築CGアニメーションの魅力

トップバッターは、株式会社ストレート(以下ストレート)の天野愛子氏。『建築CGアニメーションの魅力』と題して、実案件をもとに建築CGアニメーションについて語った。

天野愛子氏

天野愛子氏


天野氏が最初に示した数字は2.5年。これは、天野氏がCGを初めてからの期間だという。
学生時は設計・デザインを学んだが、卒業後は他業種での就業や海外で過ごしていたそうだ。イメージを人に伝える事の難しさを感じていた天野氏は、イメージをビジュアル化・共有できるCGのすばらしさに惹かれたという。3ds MaxとAuto CADによるパース制作の基本工程を学んで株式会社ストレートに入社。パース・アニメーション制作に携わっていく。
実案件の話に入る前に、現状、天野氏がCGでどのようなことができるようになったのか、今回のMeetUp用に3ds Maxで制作したアニメーションを紹介。


会場となった株式会社Tooの3階フロアのウォークスルーアニメーションを制作。
実案件ではあまり実現できない表現を取り入れたそうだ。
現在進行形でさまざまな表現方法を身につけてきた天野氏だが、入社当時は右も左もわからず苦労したようだ。
制作業務での制作ルールを覚えると共に、モデリング、レタッチ、ディレクション業務を経験。
4ヶ月に入る頃に、入社当初からやってみたかったアニメーションに携わっていく。ストレートでアニメーションに使用するのは、3ds MaxとLUMION。期間、要望などの案件状況に合わせ対応している。
3ds Maxはさまざまなことができて表現の幅は広いが、知識とテクニックを要する。このため、天野氏は比較的操作が簡単で短納期にも対応できるLUMIONで制作を開始した。
初めての打ち合わせでは、ひとつの工程にどれくらい時間がかかるか想像できず、レンダリングの連番書き出しといった用語も分からず、上司とクライアントの話を理解することから始まったという。

最初に携わったアニメでは3ds Maxでモデリングを行い、LUMIONで配置、エフェクトの仕上げなど一通り指導を受けながら制作を行った。

初めてクライアントと直接連絡をとりあって制作を行ったアニメーション。クライアントとのやり取り、提案力の必要性など、この案件を通して学んだことが数多くあったという。また、自分が携わった仕事の実物を初めて見ることができ、思い出深い案件となった。
何案件かの制作を通して、製作の全体像が分かってきた天野氏。
次のアニメは別のチームとの共同での案件。今までと違う見方や考え方を取り入れる事となり、普段教わってきたことをさらに深く考える、自身のターニングポイントになった。建物をいかにかっこよく魅せるためのアプローチなどを学べたそうだ。


カメラを動かさず、植栽などで建物の輪郭を表現する手法が使われている。
また、静止画アニメーション用のイメージパースの制作も行い、インパクトのある絵の強さや映像構成の大切さを学んだ。
天野氏がさまざまな案件を通して、何を大切にするようになったか。まず、制作時間に関しては、自分を常に疑うようになったという。余裕があると思わず、きちんとひとつひとつ片づけていくのだ。
また、細かい部分に時間をかけてしまいそうになるので、全体の工程を見るように努めている。この辺りが、学生と納期のあるプロで大きく違う部分だという。

天野氏は、日常の風景や、趣味・物事に興味を持つなど、色々なことが業務に生きてくること、反省点をうまく消化し気持ちを切り替えて次に進むという点も挙げた。
続いて再生されたアニメーションは、それまでの案件を通して学んだ、見せ方のアプローチや表現に趣向を凝らした案件で、「クライアントにも喜ばれ、自信になった作品」だと解説した。

エンディングの重要性を教わり、真っ赤な夕焼け空を作成。派手すぎかと懸念もあったが、BGMの壮大さもマッチしていたため、インパクトを与えられたようで喜んでいただけた。約2週間ちょっとで仕上げることができ、作業速度の向上も感じられたという。
続いて再生されたのは、ずっとやりたかった3ds Maxでのアニメーション案件。群馬県のコンベンションセンター誘致のための動画だ。レンダラーのV-Rayはパース制作で使用していたが、アニメーションとなることで、さまざまな箇所でのチラつきやシミに悩まされたという。決められた制作期間の中で何を優先させるか等の判断力の大切さを改めて感じた。
クライアントの要望を取り入れ、また自から提案し、一丸となってひとつのものをつくり上げる、ものづくりの楽しさを実感できた案件となった。
また、3ds Max 2018のArnoldではチラつきなどの原因特定がわかりやすいようなので、今後は案件の状況にあったレンダラーを活用することも考えているそうだ。


天野氏は建築パースを「いかようにも表現でき、ドラマチック」、アニメーションを「カメラワークや構成によって建物のさまざまな顔を引き出せる」魅力的なものだと語った。
そして「従来の表現と違った見せ方も提案していけるよう、これからもいろいろなものに目を向けもっと勉強していたい」と表明。「動きでも表現でも、みなさんに感動を与えられる作品が作れるように邁進したい」と締めくくった。


最後に、株式会社ストレートのサンプルアニメーションも紹介された。
槙田 淑子

槙田 淑子Producer, Facilitator, Writer

記事一覧

建築パース・建築ビジュアライゼーション分野のポータルサイト『Kviz』編集長。デジタルメディアシステム部 所属、社内ワークスタイルサポートプロジェクト「わくすた」リーダー。エンターテイメント・文教などデジタルメディアを使う業界向けの製品プロモーションやセミナーも担当しています。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。