ホロラボが目指す未来 – 新設AEC/SIARチーム深掘り座談会

3月18日(金)にオンラインで開催された「ホロラボが目指す 未来新設AEC/SIARチーム深掘り座談会!」のウェビナーの内容をご紹介します。

主催 :株式会社Too
協力 :株式会社ホロラボ

ゲスト :株式会社ホロラボ AECチーム Project Manager 関根健太氏(右)
株式会社ホロラボ SIARチーム Project Manager 平山智予氏(左)

関根健太氏と平山智予氏

どうぞ、当日の映像もあわせてご覧ください!

株式会社ホロラボとは?

株式会社ホロラボ会社概要

まずは『ホロラボ』という会社について、簡単に紹介します。ホロラボはHoloLensがリリースされた2017年1月18日に設立した会社で、今年で5年目になります。オフィスは東京の五反田にありますが、リモートワークを導入している関係でオフィスに従業員がいることはほとんどありません。従業員数は現在50名ですが、それ以外にも外部にパートナーの方もいるため、実際にはもう少し多くの人間が活動しています。

ホロラボ社員 - Mixed Realityのエキスパート

従業員全員がMixed Realityのエキスパートで、従業員数は徐々に増えていっています。リモートワークしていることもあり、私自身もまだ全員に会えていません。(笑)

事業内容としては、『Windows Mixed Reality』によるHoloLensを使ったアプリケーションの開発や調査研究、システムの開発、普及啓発活動等のイベントも行っています。

MR導入サービス

MR導入サービスとしては、大きく分けて

  • パッケージ
  • お客様向けシステム企画・開発
  • 開発支援

の3つのサービスを展開しています。
一番手軽に始められるパッケージは、MR技術の導入・推進するために既存のソフトウェアを使って、慣れてもらうためのサービスです。開発支援は、我々がパートナーとして加わって、自分たちで新しくソフトやアプリを作るサポートをしています。導入の初歩から共同開発まで、MRに関わることを幅広く事業展開しています。

MRPPゴールド認定パートナー

株式会社ホロラボは、Microsoft Mixed Realityの開発パートナーとしてMicrosoftの認定を受けており、昨年・今年と2年連続でゴールドの認定を受けています。世界的に見ても取得は簡単ではなく、日本国内においてもホロラボともう1社の2社だけです。

MR(Mixed Reality)とHoloLensについて

Mixed Reality

ここで、Mixed Realityについて簡単に紹介します。Mixed Realityは「MR」と略されています。
左側のReal Environment(現実環境)から、右側のVirtual Environment(データ空間)の間では、段階的にレイヤーを重ね合わせていきます。このプロセスすべてを、VRやARではなくMixed Reality、つまりMRという言い方で表現しています。

HoloLens

次に、Microsoftが製造・販売しているセンサーデバイス『HoloLens』についてです。2017年1月18日の日本でのリリースから既に5年経っていることもあり、近年は知名度も上がってきています。OSも含んだセンサー一体型のディスプレイプロセッサーを搭載したデバイスで、分かりやすく言うと「頭にかぶるパソコン」というイメージです。

ヘッドマウントディスプレイを使うことで、さまざまな情報を目の前の空間に展開することができます。空間情報はデバイスを着用している自分にしか見えないため、周りの人から見ると怪しいゴーグルを被った人に見えてしまいます。

少し余談ですが、先ほど紹介した従業員の写真で全員がHoloLensを着けているのは、入社時に1人1台HoloLensを支給しているからです。実際にデバイスを使ってデモンストレーションしたり、お客様に案内するためにも必要になります。そういった背景もあり、私たちは日常的にHoloLensを着けることに慣れすぎてしまい、着けたまま外出してしまうということもあります。

HoloLens自体がまだ大きくて顔が見えなくなってしまうため、今ではまだ外でHoloLensを着けていると目立ってしまいます。近い将来端末もコンパクトになり、外で着用することも一般的になっていくだろうと考えています。

MR関連パッケージサービスの提供

MR関連パッケージサービスのご提供

まずは、弊社で取り扱っているパッケージサービスを簡単に紹介します。現在提供しているサービスは合計で6つあります。他にも提供しているサービスはあるのですが、パッケージサービスとして一般向けに出しているのはこの6つです。今回は、5つだけ抜粋して紹介していきます。

mixpace(ミックスペース)

1つ目は『mixpace(ミックスペース)』です。製造業や建設業向けの可視化ソリューションで、SoftBank C&S株式会社と共同で提供しています。重たくて複雑だった3次元CADやBIMのデータをクラウドサーバーに上げることで、HoloLensやiPadでデータを素早く読み込むことができます。

BIMデータは容量が重いため、読み込むだけでも時間がかかっていました。そのようなケースでも、クラウドサーバーにアップロードするだけで、わずか数分で変換して読み込むことができます。タブレットでも読み込めるため、HoloLensがなくても実際の空間にAR情報をMixed Realityで重ね合わせて表示し、レビューや検証などを手軽に行うことができます。

HOLO-COMMUNICATION(ホロコミュニケーション)

2つ目が、『HOLO-COMMUNICATION(ホロコミュニケーション)』です。センサーとカメラで画面の向こう側にいる人の情報を取得し、空間上に表現するSF映画で見たような3D立体映像遠隔コミュニケーションシステムです。現状では一方通行の表現なのですが、こういったコミュニケーションがとれる仕組みを作っています。

TechiCapture(テクニキャプチャ)

3つ目が『TechiCapture(テクニキャプチャ)』です。こちらは製造業にフォーカスしたソフトになっています。HoloLensで作業者の手の動きや目の動き、頭の位置情報などの移動したログを記録して、実際の空間の中に再現するというソフトウェアです。

熟練者が日常的に行っていることを記録するだけで、後から何度でもリプレイで再生することができます。リプレイデータを繰り返し見ることで、初心者の人が技術を反復して学習できるトレーニングツールになっています。

手放しマニュアル

4つ目が『手放しマニュアル』です。マニュアルには紙媒体や映像などの資料がありますが、作業しながら確認するにはどうしても手間がかかってしまいます。このソフトウェアを使えば、空間上の自分の見やすい位置にマニュアルを置くことで、目線や頭の動きだけでマニュアルを確認しながら作業することができます。作業中に手を離すことなく、円滑に作業を進めることができるツールになっています。

toMap(トゥマップ)

5つ目が、『toMap(トゥマップ)』です。建築・建設業界に関わる方は、『PLATEAU(プラトー)』という名前を聞いたことがある人も多いと思います。PLATEAUとは、国交省が推進している3D都市モデルプラットフォームです。toMapは、PLATEAUの中に自分たちのデータを共有し、重ね合わせることができるサービスになっています。

ホロラボの業界別プロジェクト数

さまざまな新サービスを提供してるのですが、現在は開発案件が非常に増えてきています。
ここで、2019年から2021年の3年間で取り扱ってきたプロジェクトの数を紹介します。

プロジェクト数

図上の薄い青色の2019年は、全部で113件のプロジェクトがありました。2020年は175件、2021年は208件と、少しずつ増えている様子が確認できると思います。事業ごとに見ると、TMT(テクノロジーメディアテレコム)という通信事業が件数の多くを占めています。次点で、製造業という状況です。

次にAEC(建築・建設業界)の案件ですが、2019年では20件だったものが、翌年の2020年には約2倍に増えて42件になりました。2021年も42件で件数は同じなのですが、売上は前年比170%まで伸びています。時代が進むにつれて、各企業様の中で3Dデータ関係のプロジェクトが重要視されてきている背景が影響していると思われます。そういった状況もあり、社会的にAECに対する注目度が上がってきています。

AEC(Architecture Enginnering Construction)

ホロラボで現在取引しているお客さまは、

  • ゼネコン
  • デベロッパー
  • ハウスメーカー
  • 総合設計事務所
  • プラントエンジニアリング

などが中心になっています。

AECチーム/SIARチーム発足

近年注目度が上がっていることもあり、ホロラボはそれぞれの業界に対しての特化チームとして、『AECチーム』と『SIARチーム』という2つのチームを新設することになりました。

AEC SIAR チーム発足

従来のAECチームは、先ほど紹介したmixpaceというサービスの設計データの可視化や、データ化に特化していました。今ではそれだけにとどまらず、ドメイン知識を高めることで、実際に活用する場面を想定したサービスを提供し、専門チームとして対応をより広げています。

空間情報技術に特化したSIARチーム

ではここから、SIARチームについて説明していきます。SIARは「Special Info Architcts」の頭文字をとった略称になっています。ちなみに「シヤー」ではなく「サイヤー」と読みますので、間違えないように注意してください。SIARは、空間スキャンやフォトグラメトリ、デジタルアーカイブ、デジタル空間や体験デザインなどの空間情報技術に特化したチームとなっています。

代表的なご相談例として、

  • 3Dデータを活用したコンテンツ制作をしたいが3Dデータが無い
  • 改装/改築などによって実際の建築物とBIM/CADデータに差異がある
  • フルCGではなく現実世界の要素を取り入れたコンテンツを制作したい

などが多いです。
チームの成り立ちですが、SIARはTMTチームから派生したチームです。TMTチームの業務が増えてしまったため、空間にCGオブジェクトをMR上で配置する位置合わせやVR空間での空間づくりなどを、SIARチームで分業して専門的に行っています。

SIAR他チームとの連携

チームとして分かれてはいますが、所属チームに関係なくSIARチームのメンバーもAECチームに参加するケースがあります。お互いの立場が流動的なため、それぞれのチームの持つ強みを活かすために常に連携するように心掛けています。

そのため、チームの中だけで業務が完結するということはほとんどありません。例を出すと、AECチームはお客様とのやり取りをする窓口のような立場を担うことが多いです。建設業のお客様から相談があった場合は、最初に相談内容を読み込んで、「どういう提案をするのか」や「どういう技術を提供することで悩みに応えていくのか」という検討をします。

その結果によって、HoloLensチームに仕事が振られたり、SIARチームが情報を取得してデータの構築を行ったり、場合によってはR&Dチームでさらに新規の取り組みやサービスに転化したりなど、案件によって動きはさまざまです。対応が決まっているわけではないからこそ、それぞれの案件に合わせていく形で、それぞれのチームがコラボレーションしながら活動しています。

SIAR 他チームとの連携

現実の空間をスキャナーやデジタルカメラでフォトグラメトリして3Dデータにするという作業は、どの企業でもできることです。その中で、ホロラボ、つまりSIARチームの強みは3Dデータを美しくアーカイブする技術や、現実に近いように作って保存できることです。

用途に応じた3Dデータを作成します

具体的な事業は、上の画像のように3Dデータ活用トランスフォーメーションとして文化財のアーカイブからBIMやCAD、位置情報合わせなどを行っています。技術試行においても、3Dのスキャン技術やフォトグラメトリ、高精細データリモートレンダリングなどを行っています。

最後に、SIARチームの活動事例を簡単に紹介します。昨年、ホロラボが株式会社NTTドコモと森ビル株式会社と共同で、お台場のヴィーナスフォートで作成したARcloudコンテンツです。

NTTドコモ様・森ビル様ARcloudコンテンツ

空間情報を正確に取得する技術や位置合わせ、コンテンツの企画・制作、多人数プレー、VRをホロラボで手がけました。ホロラボ内に1つのツリーデータがあるだけで、これだけの対応ができるというモデルケースの1つになります。

空間情報の取得・構築、可視化・活用

空間情報の取得・構築、可視化・活用

空間情報は、BIM・CIM、3Dスキャンフォトグラメトリ、センサーで取得します。特定の場所に対して、新たに計画される設計や情報、取り巻く環境である人の動き、温度、空気の流れ、音などの環境情報を取得して可視化するまでの提案が、SIARチームの担当です。

空間情報は、BIM・CIM、3Dスキャンフォトグラメトリ、センサーで取得します。特定の場所に対して、新たに計画される設計や情報、取り巻く環境である人の動き、温度、空気の流れ、音などの環境情報を取得して可視化するまでの提案が、SIARチームの担当です。

建設IT/DX

建築ITとDX

建設業界でも聞くことが増えた言葉、『IT』と『DX』について触れていきます。表面的に似た印象がある2つの言葉ですが、意味は大きく異なっています。IT化は、従来のやり方を効率化するための手段を指します。対してDXは、デジタルトランスフォーメーションという言葉の通りで、デジタルの技術を使って変革するという意味があります。

単純な進化として、以前は手書きだった図面がデータ化されたCADや、二次元の図面が三次元化されたBIMなどがあります。しかし、BIMの本質はデータベースとして共有することで、関係者全員がいつでも確認できることにあります。データベース上の正しい情報と施工中の現地の情報がずれている場合、変更点をデータベースに反映するだけで、全員が一目で状況を理解できます。

従来の流れでは、報告書に書いてあったが共有されていない、参照先が異なっていて分からなかったというケースが起こり得ました。これがBIMという総合データにまとめられたことで、いつ誰が見ても必ず同じ情報が得られるようになりました。

質疑応答

ではここからは、ウェビナー中で聞かれた質問に回答していきます。

Q1. 土木業界での事例にはどういったものがありますか?

導入事例 株式会社大林組様

いくつか事例はありますが、最初は株式会社大林組様の例からはじめていきます。土木ではなくて建築の事例ですが、施工管理や施設の検査にmixpaceを使っています。これまでの施工の検査は、現場でチェックする箇所に付箋を貼って、歩きながら1つ1つの項目を確認していくという流れでした。その全ての作業でmixpaceを使い、HoloLensやiPadに記録することで、取得データをダイレクトにデータベースに直結することができました。

アナログでやっていると、貼っていた付箋が雨風で剝がれてしまうケースや、見落としてしまうというケースが多発しがちです。mixpaceでデータ化したリストを確認していくことで、より確実にチェック・管理を行うことができます。

位置合わせには、ARマーカーを使っています。BIMファイル内での座標とQRコードの位置をあらかじめ設定しておくことで、QRコードを基準点としてデータが再生されるため、位置合わせも簡単に行うことができます。

導入事例 大和ハウス工業株式会社様

次に、大和ハウス工業株式会社様での導入事例です。施工現場とオフィスがリモートでつながっていたため、パソコンの画面やHoloLensを介しながらコミュニケーションをとることができました。

QRコードの位置とデータ上の座標をXYZ位置で決めるだけで、データベース内でも正確に建物が表示されます。これにより、現実のイメージと重ね合わせたモデルの情報がリアルタイムで確認可能です。

導入事例 川田工業株式会社様

土木の事例として、川田工業株式会社様の橋梁の設計した案件を紹介します。mixpaceで3Dモデルを実空間に投影することで、実際に物体を置いたイメージが施工前に確認できました。

HoloLensは視野角が広くないため、対象物が大きい場合見えづらいというイメージがありますが、画像左側の写真のように現地でもしっかりと見ることができました。

土木・建築の現場では、作業していく中で設計が変わってしまい、図面通りに進まないケースもあります。右下の写真がそのケースで、計画では指定の位置に排水管を通す予定でしたが、データを投影してみると実際には通らないことがわかりました。mixpaceによってズレが事前にわかり、トラブルを未然に防げたケースになります。

導入事例 日本国土開発株式会社

最後に、日本国土開発株式会社の導入事例を紹介します。こちらも橋梁の建築例で、橋梁の配筋検査などもMRを使って検査していました。図面では理解しにくい複雑な配筋ですが、mixpaceで実空間に3Dデータ設計モデルを投影しながら確認できました。鉄筋1つ1つを正確に認識するのは難しいですが、色分けすることでわかりやすく配筋を可視化できました。

Q2. mixpaceを実際に使ってみたいのですが、体験会やデモスペースなどはどこかにあるのでしょうか?

デモスペースは常設で用意していないですが、ホロラボのオフィスの方に来てもらえると案内できます。また、有償にはなりますが、mixpaceには30日のお試しプランも用意しています。年間契約のフルプランでなくても、実際にHoloLensに触ることができるおすすめの導入プランです。ぜひこのプランを活用してみてください。

Q3. 株式会社ホロラボは中途採用していますか?

むしろ、ホロラボは基本的に中途採用のみです。興味があることや自分がやりたいことを、ホロラボでやりたいと思う方はぜひ応募してください。常時受け付けはしていませんが、熱意を持ってアプローチしてもらえれば、募集・採用しているタイミングでこちらから連絡させてもらっています。

今すぐにホロラボが関わってやるべきことが明確にある場合は、すぐに案件として動かしながら参加するというケースもありえます。現在のホロラボのメンバーの中には、案件ごと抱えて飛び込んできた人もいて、実際にその案件がホロラボの中の新しい軸の1つになったということもありました。

Q4. 大きなビルの建設現場でMR技術を使うと、工期の短縮やコストダウンに直結するものですか?

結論から言うと、これはダイレクトに直結します。先ほど紹介した導入事例の株式会社大林組様の施工検査ですが、工期コストを約3割ぐらい縮減できたと聞いています。川田工業株式会社様の橋梁の事例においても、施工の段階で合わなくなってしまった場合は工程を全てやり直す必要があります。事前にMRで確認できていれば修正する時間もコストもかからないため、確実に効率化につながります。

また、UnityやUnreal Engineで可視化してシミュレーションできれば、事前に設計データを等身大で見ることができます。これにより、建築後に「イメージと違った」というケースも減らすことができます。

Q5. 建築は特に精度が求められることがあると思いますが、精度への考え方や対策はありますか?

mixpaceの位置合わせですが、屋外ではどうしても正確に合わないということがあります。「どこまでの精度を求めるのか」という問題もありますが、現在のセンサーの精度ではmm以下の単位を合わせるのは難しいのが現実です。精度を求めるためには、技術の進歩は必須になります。実際はソフトウェア自体よりもセンサーの精度の問題もあり、そのあたりも含めて今後の課題になっていくと思います。

Q6. 自社でHoloLensを導入する際のサポートや講習などは行っていますか?

特に講習などはやっていません。ただmixpaceは多くのお客様が使っているため、フィードバックやFAQ、ヘルプがとても充実しています。FAQやヘルプで解決できない特殊なケースでは、フィードバックをもらって弊社で検証したうえで解決策を提案しています。何にせよまずはFAQやヘルプを活用して、実際に触って使ってみることが一番の早道だと思います。

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