コクヨ 三戸幸裕氏に聞く 空間設計と3Dビジュアライゼーション(前編)

コクヨの三本柱の事業展開

「コクヨ」という社名は漢字で書くと「国誉」。つまり「国の誉れ」という意味です。そして、その「国の誉れ」の名に見合った商品やサービスを提供していくことにより、世の役に立つことを目指している会社なのです。この企業理念は1905年の創業以来、変わっていません。
一方で、コクヨが展開する事業フィールドは広がり続けています。創業時は和式帳簿の表紙製造からスタートしたそうですが、現在の主力事業は、文具、家具、通販という三本柱で展開しています。私が所属しているファニチャー事業本部は、家具の製造販売を担う部門で、オフィス家具を中心に公共家具などの製造・販売を行っています。

スペースソリューション事業部のミッション

オフィス家具は、店に並べて売るよりもオフィス移転する企業から直接依頼されて販売するケースがほとんどです。競合各社とのコンペ案件も多く、そうなると各社それぞれ「どの家具をどう配置し、どんなオフィス空間を創るのか」、「どんな働き方ができるのか」を設計・提案して、お客様に選んでいただくことになります。この空間づくりと提案がスペースソリューションのミッションです。
そのため、当事業部にはオフィスを設計する建築士やインテリアコーディネーター、働き方を考えるワークスタイルコンサルタントまでいます。さらに実際のプレゼンに際しては訴求力を高めるため、3DCGによるさまざまなビジュアライゼーションを活用しています。この3Dビジュアライゼーションに関わる制作とテクニカルコーディネートが私の主な業務です。

三戸幸裕 氏

なぜ3Dビジュアライゼーションが必要か

コンペ案件では、確実にお客様に選ばれるべく設計はもちろんプレゼンテーションにも一段と力が入ります。競合に負けない、よりクオリティの高いビジュアルを作る必要性があるのです。
設計案件の提案で用いるビジュアライゼーションは建築パースが中心となります。その制作については外注と社内制作を併用する事で、質と量とスピードを両立させています。社内制作では設計者も傍にいるので、細かい指示のやりとりや確認もスムーズに行えます。ビジュアル制作だけでなく、設計業務も内容をブラッシュアップしていく余裕が生まれ、さらなる品質向上に繋がります。

パースからウォークスルー、VRへ

従来は静止画パースが中心でしたが、今ではさまざまな3Dビジュアライゼーションを活用するようになりました。特に近年、新しい見せ方が次々と出現し、これら新手法を活かしたプレゼンが始まっています。最近ではウォークスルー・アニメーションやVRを利用しています。
内容に適した手法を選び活用しています。「お客様からこんな要望をもらったが、これに応えるには静止画よりVRの方が効果的では?」などと見せ方を考えていきます。新しい手法は次々登場するので、どれにどんな効果があるのか、コクヨのやり方に合うのか試行錯誤しながら制作を行っています。

VR事例

VRを活用した事例を紹介しましょう。移転前に新しいオフィスをリアルに感じてもらう為に移転先フロアでVR体験会を行いました。5000㎡の移転先フロアは家具も何も入ってない状態で、3D CGで作ったVRオフィスを見せ「どんなオフィスになるか」体感してもらおうと考えました。
よりリアルなVR体験とするため、VRの見せ方を工夫しました。まず現地に一脚だけ椅子を置き、この椅子とバーチャル空間のオフィスの椅子をリンク。VR体験者には、この椅子に座った状態からスタートしてもらったのです。

VRによるオフィス紹介(パース)

VRによるオフィス紹介(パース)

VRによるオフィス紹介(VR視界)

VRによるオフィス紹介(VR視界)

バーチャルオフィスを体感させるために

VRゴーグルを被り本物の椅子に座った体験者は、VR上の椅子に本当に座っている感覚からスタートするので一気に没入感を高める事ができます。また、ただバーチャルオフィス内を「歩いて見てください」と言うだけでは、「どこへ行けば良いか分らない」と言われる方もいます。そこで、VR空間内で「宝探し」の様なゲームを行う仕組みにしました。ゲーム要素を組み込む事により、VRオフィス内を探索する目的を得た体験者は、積極的にバーチャルオフィス内を歩き回ってくれるようになりました。参加した方からは「この席は集中できそう」や「出社したらこういうルートで自席へ行くのか」など新オフィスで働く姿を意識したコメントも聞かれ、VR体験会を成功裡に終えることができたのです。

空間設計はバーチャルな商品案だから

VRはしばしば物珍しさだけで使われますが、それは当社のやり方ではありません。私たちにとってそれは、設計意図を正確に、そして高い説得力で伝えるための手段です。たとえば、あるお客様が新オフィスについて「来客の視界が気になる」と仰有るので、パノラマVRを使い「特定の視点から見渡した視界」を体験いただいた事があります。VRで確認されたお客様にはすぐご納得いただけました。
空間設計は、販売時点で実物が存在しないバーチャルな商品案です。プロダクトなら実寸のモックアップが使えますが、建築では実寸大の模型を作る事は現実的ではありません。建築界でモックアップに替わるものがVRなのです。現状、お客様の所でのVRプレゼンにはハイスペックPCやVR機材などのセッティングが必要で、限られたプレゼン時間の中で行うのは困難です。しかし、これもハードが進化すればいつか可能になると思っています。

槙田 淑子

槙田 淑子Producer, Facilitator, Writer

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建築パース・建築ビジュアライゼーション分野のポータルサイト『Kviz』編集長。デジタルメディアシステム部 所属、社内ワークスタイルサポートプロジェクト「わくすた」リーダー。エンターテイメント・文教などデジタルメディアを使う業界向けの製品プロモーションやセミナーも担当しています。

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