2026年7月30日(木)に開催された「建築ビジュアライゼーションMeetUp第9弾」より、セミナー「Formaが実現する次世代設計 × ビジュアライゼーションワークフロー」の内容をご紹介します。

セミナー概要

AIの登場によって、設計者自身がビジュアライゼーションへと進出する動きが以前にも増して広がっています。設計者の仕事の進め方や使うツールが変われば、それはビジュアライザーの仕事にも大きく関わってきます。本セミナーでは、初期設計を支援するクラウドツール群「Forma for Design」を軸に、設計者の視点からこれからのビジュアライゼーションのあり方を考えます。
設計とビジュアライゼーション、それぞれのバックグラウンドをもつ二人の登壇者のロールプレイを交えながら、設計とビジュアライゼーションのこれまでの関係、Forma for Designがもたらす変化、そしてビジュアライザーに残される領域とは何かを紐解いていきます。
主催 :株式会社Too
協賛 :オートデスク株式会社
登壇者 :オートデスク株式会社 田中 宏尭 氏、吉田 将宏 氏
登壇者紹介
本セミナーは、オートデスクの吉田将宏と田中宏尭の二名で進めます。

吉田は、3ds Maxを長年担当しています。3ds Maxはエンターテインメント部門のツールであり、吉田自身ももともとビジュアライゼーションに携わってきた人間です。建築ビジュアライゼーションMeetUpには第4回にも登壇し、当時から「これからビジュアライゼーションはどうなるのか」というテーマで話をしてきました。

田中は、オートデスク株式会社で建築・土木を担当しています。もともと組織設計事務所に所属し、意匠設計とBIM推進に携わってきました。現在は、建築業界全体のDX支援を行っています。
3ds Maxの担当である吉田に加え、今回は設計部門から田中も加わることで、設計とビジュアライゼーションの双方の視点からセミナーを展開します。

設計者の視点から考える理由

「AIがどんどん入ってきて、自分たちの仕事がなくなってしまうのではないか」、こうした声は、皆さんの社内でも出ているかもしれません。そこで、本セミナーでは「ビジュアライザーの未来はどうなるか」をテーマとして考えていきます。
このテーマを語るうえで、「ビジュアライズ系の製品にこういうAI機能が入るので今後も使ってください」と言えれば格好がつくのですが、そうしたビジュアライズ系AIの話は、ツールが公開されるまではお話しできません。一方で、設計側のツールについては、すでに公開され、推し進められているものがあります。そこで本セミナーでは、設計者の視点、設計ツールの視点から、ビジュアライゼーションが今後どう変わっていくのかを取り上げます。

ビジュアライゼーションは、常に建築・設計ありきで進むものです。したがって、設計者の仕事の進め方や使うツールが変わっていくことは、ビジュアライザーの仕事にも深く関わってきます。

設計とビジュアライゼーション、これまでの関係

建築設計とは何か

建築設計とは、「抽象と具体を往復しながら計画を収斂させていくこと」だと捉えています。横軸に設計のフェーズ、縦軸に抽象度を置くと、企画設計の段階では抽象度が高く、設計が進むにつれて具体的になっていきます。ただし、そのプロセスは一直線ではありません。あるフェーズでいったんピンポイントに具体的な検討を行い、再びボリュームに戻り、コンセプトを考え直してまた詰めていく。こうして抽象度を行き来しながら前進していくものです。
ビジュアライゼーションは、まさにこの「抽象と具体を往復する」行為を手助けする役割を担っています。簡易図面を絵に起こしてみて、「やはり違ったので、ここを変えよう」と繰り返していくというイメージです。
これまでの関係

一例として、上の画像のような流れがあります。まず企画設計から始まり、コンセプトとなる簡易図面を作成します。その図面情報を元にビジュアライザーがビジュアライゼーション作品を制作し、それを用いて設計側がコンペや施主との合意形成を行います。
設計が進んで詳細化した図面が再びビジュアライザーに渡り、作品化され、今度は広告などに使われていく、という流れです。

設計データは従来AutoCADの図面が中心でしたが、これがBIMデータや3Dデータへと変化してきました。3Dデータがあれば3ds Maxで一から立ち上げる必要がなく、リアルタイム系のツールでそのままビジュアライズする流れも生まれました。
さらに近年はAIが加わり、「AIを使えば簡単にビジュアライゼーションができるので、設計者自身がそのまま手がける」という流れも生まれつつあります。このように、設計とビジュアライゼーションの関係性は変化し続けています。

イギリスで行われた調査で設計者がどのシーンでAIを使っているかを尋ねたところ、最も多かったのは企画設計段階のビジュアライゼーションでした。設計者にとってもAIが身近になったことで、初期段階であれば自分たちでも手を伸ばせるようになってきた、というわけです。

使用用途を調べた調査でも同様の傾向が見られ、最も多かった用途はコンセプト段階のイメージづくりでした。こうした複数の集計からも、企画・コンセプト段階のイメージ生成にAIが着実に浸透してきていることが読み取れます。

Forma for Design とは

こうした状況の中でご紹介するのが「Forma」、そして「Forma for Design」です。

Formaは、建築業界に特化したクラウドプラットフォームで、企画設計から施工、運用に至るライフサイクル全体をカバーします。「Forma ◯◯」と名の付くものはすべてクラウドのツール群を指します。その中でも、企画設計や初期検討に特化したツール群を「Forma for Design」と呼びます。具体的には、「Forma Board」、「Forma Site Design」、「Forma Building Design」の三つがこれにあたります。
Formaが実現するワークフロー
ここからは、Forma for DesignとRevitの位置づけを説明した動画の内容に沿って進めていきます。
一連のワークフローは、次のようなものです。

まずウェブブラウザ上のForma Site Designで、世界中のマップから周辺建物・道路・地形を取り込み、そのままボリュームスタディに取り掛かります。

作成したボリュームに対して環境シミュレーションを実行すると、AIが即座に結果を返してきます。

ボリュームが見えてきたらForma Building Designでスタディの精度を高めます。

Forma Site Designは街区全体の環境スタディをデザインするツールです。

そして、Forma Building Designが計画建物のプランやファサードを対象とするデザインツールです。

企画設計が固まったらRevitへ移行します。ここまでに作成した企画設計モデルはRevitの建物要素として引き継がれ、Revit上で設計を具体化していきます。

一つのモデルから一般図はもちろん、建具表や面積表が自動で書き出され、整合性の取れた図面を作成できるのがRevitの特徴です。さらに、エージェント型AIである「Autodesk Assistant」により、チャットでの操作も可能になります。

設計をアシストするツールも充実しています。Forma Boardは、アイデアを自由に書き留められるクラウド上のスケッチブックで、画像生成AIがラフスケッチをレンダリングしてくれるため、コンセプトデザインに集中できます。

本格的なパースを作成したい場合はTwinmotionを活用し、Revitモデルをワンクリックで同期してビジュアライゼーションを行えます。

加えて、プロジェクト全体のデータを管理するForma Data Management Essentialsは、容量無制限のクラウドストレージでありながら、ブラウザ上でRevitデータを閲覧し、その場でチェックバックができます。

これまで説明したフローは、Revitひとつで実現可能です。

文書作成と建築設計

このワークフローは、文書作成にたとえると分かりやすくなります。これまではWordの中で人間がドラフトを考え、清書までを行っていました。しかし現在は、ドラフトをAIでまとめ、清書をWordで行うという位置づけに変わってきています。
建築設計でも同じです。従来のAutoCADやRevitに加え、建築設計におけるAIとしてForma Site DesignとForma Building Designがあります。そこで案の大きな方向性を固め、生成するためのツールとしてRevitがある、という位置づけです。
重要なのは、AIにすべてを任せるのではなく、「AIが作った編集可能なものを人間が自ら編集し、思いを込めていくというやりとりを重ねること」にあります。そして、この全体を貫くのがForma Boardであり、アイデアスケッチや各種情報をピンナップできるデジタルスケッチブックとして、検討を蓄積しながら進めていくことができます。
Forma for Designがもたらす変化

先ほどの抽象度とフェーズのグラフに、Forma for Designが加わるとどうなるでしょうか。まず、1回あたりの検討の振れ幅が大きくなります。人間がスケッチしたものをAIが一気に具体化してくれるため、抽象的なコンセプトさえ持っていれば、それを具体像へと展開し、フィードバックを得ながら検討を進められます。
さらに、1回あたりの検討負荷が小さくなることで、より頻繁に往復できるようになります。抽象的なコンセプトスケッチと具体的な建築の検討との間を高頻度で行き来でき、結果として検討全体が綿密になっていきます。多くの案を試せるためより良い案に到達できる可能性が高まり、検討プロセス全体の進行スピードも速まっていくと考えられます。

設計者×ビジュアライザーの協働
こうして設計の初期段階が綿密に、高速に、具体的になっていったとき、ビジュアライザーはどう付き合っていけばよいでしょうか。設計者の田中とビジュアライザーの吉田が、実際に一緒に仕事をする状況を想定してロールプレイを行いました。

まず、Forma Site Designで都市モデルと自分の敷地モデルを読み込みます。ブラウザ上でGoogle Earthのように都市モデルを扱い、敷地に対して環境シミュレーションを行います。

物理シミュレーションに加え、AIが結果を予測するAIシミュレーションもあります。数秒で結果が分かるため、ストレスなく多くの案を試して環境的なフィードバックを得られます。これは、検討の具体化・高頻度化・高速化のいずれにもつながる分かりやすい例です。

Forma Site DesignはRhinoceros(以下、Rhino)ともリアルタイムでリンクできるため、読み込んだ都市モデルをそのままRhinoへ渡し、Grasshopperを使ってコンペ用の抽象的なボロノイ状のボリュームモデルを作成しました。RhinoはRevitともリアルタイムリンクが可能で、Forma Site Designを介して双方とデータをやり取りできます。

今回はRhinoでボリュームスタディを行い、作成したモデルをForma Site Designに反映させ、風向きや日照のシミュレーションを行いました。

その後、Revitへリンクして図面化へと進めていきます。

こうした検討結果やコンセプト、Forma Site DesignのスクリーンショットをForma Boardに集約し、その中でAIレンダリングを行いました。夕景の外観イメージ、コンクリートの質感を与えた内観、都市全体のレンダリングなど、さまざまなアイデアを膨らませながら検討を進めます。
これからのビジュアライゼーション パイプライン

ここからビジュアライザーの吉田が参加します。田中が具体化したリファレンス画像を見ると、外観では緑が目立ち、内観にも中庭の植栽があるなど、緑がポイントになっていることが分かります。そこで、「外観から内観にかけて緑を一連のテーマとし、外観のアングルから始まってドローンが滑り込むように内観へ入っていくカメラワークにしよう」といった議論を交わしました。

最終的には、カメラが建築に入り込み、そこにない要素が生まれていくようなイメージ映像を目指すことにしました。

そのうえで、AIを使った映像制作を試みました。なお、オートデスクは映像生成AIを提供しているわけではなく、これは製品とは関係のないところでAIを用いた試みです。まず画像2枚とプロンプトだけで生成したところ、最初は外観の設計がかなり変わってしまいました。

そこで、3ds Max(Twinmotionでも可)でカメラアングルを示したグレーモデルのビューポート映像をリファレンスとして追加しました。すると、外観は先ほどよりも改善され、カメラの動きもイメージに近づきました。さらに、建築物が何もないところから現れ、カメラが内観へ入り、各オブジェクトが立ち上がっていく簡易アニメーションをリファレンスとして追加しました。

最終的には、木が現れる程度のオブジェクトアニメーションが反映され、カメラワークや内部の配置も少しずつイメージに近づいた、という結果でここでの作業を終えました。
これからのビジュアライザー

この試みを通じて改めて見えてきたことがあります。横軸に専門性の高低、縦軸に作業難易度の高低を置き、ビジュアライザーが作る作品を並べてみます。もともと設計者が手がけられたのは、専門性も作業難易度もそれほど高くない領域まででした。そこから外れる専門性の高い作品ほど、ビジュアライザーが必要とされてきました。

しかしAIが加わったことで、「設計者 with AI」で作れる範囲は広がり、作品制作の難易度も下がってきました。それでも、AIだけでは届かない人の手が必要な領域は残ります。

文書作成でも設計でも最終的には人が手を加えるのと同様に、ビジュアライゼーションでも、具体性が上がっていくほど、ある段階から先はAIには任せられずに人の手で仕上げる必要があります。
その「残された領域」がどこにあるかは、人によって異なります。AIを普段使わない人もいれば、積極的に使う人もいます。ソフトウェアメーカーの立場からこの領域を定義するのはおこがましいことですが、今回のMeetUpのようなイベントは、まさにその領域を知るのに絶好の場です。
本日、実際の仕事でビジュアライゼーションを手がける方々が登壇し、AIの話もあれば3ds Maxの話も出てきます。「自社はここまでAIで、ここからは3ds MaxやTwinmotionで」といった話を交わすことで、これからのビジュアライザーのあり方が見えてくるはずです。



