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VRで頭の中のデザインアイデアを”見せる”。 シンプル操作!建築デザインのコミュニケーションツール「SYMMETRY」

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VRで頭の中のデザインアイデアを”見せる”。 シンプル操作!建築デザインのコミュニケーションツール「SYMMETRY」

2016年にVR(仮想現実)元年を迎え、早くも2年の月日が経ちました。建築・土木業界向けVRを手がけるDVERSE(ディヴァース)は、ビジネス現場でのVR活用を本格化する一社です。2017年2月14日に同社がリリースしたVRソフトウエア「SYMMETRY alpha」は、VR内で建築デザインの微妙なニュアンスを伝え、建築デザイナーとクライアント間のコミュニケーションの溝を埋めるツール。1年間で世界7,000社弱のユーザーから支持を受け、今夏には「SYMMETRY」の製品版をリリース予定です。

同社でCEOを務める沼倉正吾氏に、建築デザインの分野に参入した経緯や「SYMMETRY」の目指すところ、今後の事業展開を伺いました。

建築デザインの業界には「相手に正確にデザインを伝えたい」という共通の課題があった

――――― まずは、「SYMMETRY」開発の背景を教えてください。

DVERSEは2014年に設立し、国内では初期の頃からVRを扱ってきた会社です。当時はエンターテイメント業界よりで、テレビ局、映画会社、大手通信キャリアと一緒に、新しいVRコンテンツ制作に取り組んでいました。2015年頃、建築でVRを使いたいというある会社からの相談がきっかけに、プロトタイプを作り、展示会で話を聞くうちに、建築デザインの分野に共通する課題が見えてきたのです。

その課題とは「高さ、奥行き、広さ」などの空間イメージの共有です。建築/設計の現場においては、図面やパース、スケッチを使ってデザインを打ち合わせます。例えば部屋のサイズひとつとっても、設計者とクライアントの完成イメージに齟齬が生まれ、ときには作業の手戻りが起こっていました。VRは、目の前の仮想空間で大きいものを大きく、広いところを広く、実寸サイズを確認できることが特徴です。我々はここにVRが活かせると考え、エンターテイメントからビジネス向けのVR開発に進むことにしました。

――――― 建築デザインの分野に進んだ、決め手は何だったのですか?

そうですね。建築デザインの分野では、はっきりと皆さんが同じ課題に困っていたんです。「相手に正確にデザインを伝えて了解をもらう」というゴールが明確で、これは費用をかけてでも解決したい課題でした。もうひとつの理由は、建築の分野では3Dデータが普及しており、VR技術との相性が良い点です。すでに立体物としてデザインする下地があるので、これをわかりやすく伝えるというフェーズでVRが活きるだろうと。
また2016年当時のVR機材は第2世代が出たばかりで、まだまだ重く大きいものでした。VRがコンシューマー向けに普及するのは、端末がスマートな形状になってからだろうと思います。まずはビジネス向けの問題解決を、と考えました。

頭の中のデザインアイデアを”見せる”。建築デザイナーとクライアントの架け橋

「SYMMETRY(シンメトリー)」は、3D CADデータをもとに、実寸のVR空間で建築設計、空間デザイン、環境シミュレーションなどを簡単に確認できるソフトウェアです。利用者はヘッドマウントディスプレー(HMD)を通じてVR空間に入り、高さや奥行き、部屋の距離感、インテリアの配置など、従来、図面上ではわかりづらいイメージを感覚的に把握できます。

――――― 製品名「SYMMETRY」の由来は何ですか?

SYMMETRYは「対称」という言葉ですが、頭の中のアイデアを鏡のように相手に伝えることを意味しています。建築デザインの分野では、建築家やデザイナーが「こんな建物にしましょう」「こんな内装にしましょう」と、お客様にアイデアやイメージを伝えます。VRを介して頭の中のデザインをそのまま相手に伝える、というのが「SYMMETRY」の名前の由来です。

――――― 最初から今のような製品だったのですか?

いいえ。最初のプロトタイプは、VR上で周囲の山や橋などの立体的な模型が、ミニチュアのように見えるソフトウェアでした。「このミニチュアの中に入れたら面白いな」という話をしたら、次の日にはそれが実装されていたんです(笑)。
そのソフトウェアがすごく面白かったので、試しに建築系の展示会に出してみました。そのとき9割のお客様は「これが最近流行っているVRね」と、ただ新しいものを見る反応でしたが、たった2社のお客様から「この状態でよいから今すぐ売って欲しい」と前のめりな反応を得たのです。
道路や橋がメインの土木系の展示会でしたが、おそらく工事前に完成後のイメージを見たかったのだと思います。当時はまだ「ただ見るだけ」のシンプルなソフトウェアでしたが、同様のVRコンテンツをつくろうと外注制作しようとすると何百万円もかかってしまいます。ここでまず手応えを感じました。その後、2017年2月14日に「SYMMETRY alpha」をリリースしました。

広告も宣伝もなく、じわじわと拡がる世界ユーザー

――――― 「SYMMETRY alpha」の反響はいかがでしたか?

約1年間で世界中から多くのフィードバックをいただきました。ありがたいことに海外の方はフィードバックでよく褒めてくださいます(笑)。SYMMETRY alphaは、広告も打っていなくて、大きな宣伝もしていません。現在使用しているユーザーは、建築やデザイン分野に携わっていて、さらに個人で興味をもってVR機器を購入するような熱量が非常に高い方々です。現在は、北米、ヨーロッパ、日本を含むアジアでそれぞれ約1/3ずつ。北米で約900社、日本で約700社のユーザー様にお使いいただいています。

――――― 特にユーザー様に受け入れられているポイントは何だと思いますか?

なによりシンプルな操作性です。3Dデータを専門に扱う、建築/設計のプロ向けのCADソフトウェアは、メニューも多く複雑で、慣れていないとすぐには扱えないものです。一方、SYMMETRYは建築/設計のプロがお客様と話すときに、お客様が触るソフトウェアです。そのため、初めてソフトウェアに触るお客様がすぐに操作できることが重要です。体を動かすVRの利点を活かし、直感的に操作できる、言語にたよらないUIを徹底しています。実際、現在の製品は英語版のみですが、言語を理由に使いづらいという意見をいただいたことはないです。

いよいよ待望の製品版「SYMMETRY」がリリース! alpha版との違いは?

――――― 製品版「SYMMETRY」に、新たに加わる機能のポイントを教えてください!

alpha版を使ってもらい、「VRを実際の業務で使えますか?」「業務で使うならどんな機能が欲しいですか?」を世界中のユーザー様からフィードバックいただいて、より業務フローに寄りそったのが製品版です。

今回、大きなポイントとして新たに「確認」「修正」「承認」という3つの機能を追加する予定です。alpha版ではCADデータを”見る”だけでしたが、多くの方から”見たら修正したい”という要望をいただき、VR空間内で直接修正できる機能や、また業務完結スピードを向上するべく、お客様からサインや判子をもらう承認機能を追加予定しています。確認機能では、「床を確認してください」「壁色を確認してください」といった建築デザイナーからのチェックリストをもとに、お客様は了承、あるいは音声で修正指示を残すことができます。そして承認内容ややりとりの履歴を残せるようになります。

また複数人で同じVR空間に入る機能はalpha版にもありましたが、製品版ではチームでリアルタイムにデータ共有できるようになり、同じVR空間でチームメンバーと話し合った内容を履歴として残せるようになる予定です。

――――― 「SYMMETRY」は、とくに建築/設計のどの工程にオススメでしょうか?

建築/設計の作業工程の前段にあたる「企画」「基本設計」あたり、詳細な設計前のいわゆる意匠設計とか、デザインと呼ばれるようなフェーズにはまるツールです。これはボリューム検討や天空率、日光でどのくらい影が指すといった、空間スケールが大きく影響する工程です。
この企画部分のコミュニケーションでは、いままで2Dベースや3Dモデルを画面上で見ることしかできませんでした。小さくとも立体感がある方がわかりやすいと模型を使うこともあり、我々のVRソフトウェアはその延長線にあります。SYMMETRYは、自社で独自システムを開発するのが難しい、中小規模の会社様にこそ使っていただきたい製品です。

VRはわかりやすく伝えるツール。沼倉氏が見据えるその先の未来

――――― 「SYMMETRY」の今後の展開は、どう考えているのですか?

一口に建築デザインと言っても、お店、オフィス、住宅、展示会場、イベントプロモーション……など、非常に幅広い分野があり、それぞれ内装対応や機能が変わってきます。例えば、住宅設計ならいろいろな建築材を使用して見積もりを算出したい、お店であれば店舗用の什器を配置したいといった要望を受けます。また、住宅設計なら電灯の点灯、大きな建物なら耐震強度の測定、ビル設計では避難経路を、お店では来店されたお客様がどこを見て歩くのかという目線をシミュレーションしたい、といったように機能の要望もさまざまです。
フォードバックをもとに、今後もアップデートしていきますが、特殊な要望であればカスタマイズでの機能実装も視野に入れています。

――――― 「SYMMETRY」によって、どんな世界を実現したいですか?

そうですね。いまのVRは、ただ立体的に物が見られるツールという側面が強いですが、将来的には仮想空間でのシミュレーションツールになると考えています。
例えばWebのバナー広告は数々のパターンをつくって、どれが一番クリックされるか効果を計測します。これと同様に、実店舗の販売実績データと、仮想空間の店舗デザインやレイアウト、商品ディスプレイなどの情報を組み合わせて、VR空間で販売実績などをシミュレーションできるようになります。我々はVRの会社ですが、コアスキルは数値のデータをわかりやすく処理するところにあります。VRはそれをわかりやすく見せるためのツール。ここを整えるのが、我々の仕事かと思っています。

――――― 最後にひとことお願いいたします。

VRはまだ登場して2年ほど。我々も実際の現場にとって本当に使いやすい機能を、これから一緒につくっていくことになると思います。ハードルも感じるかもしれませんが、新しい技術を便利に使うことで、よりクリエイティブで本質的な仕事に集中できるようになると思います。ぜひお試しいただきたいと思います。


DVERSE Inc.
2014年10月にVR専門企業として設立。テレビ局、映画会社、大手通信キャリアといった様々な企業とのコラボレーションを経て、現在、建築・土木・デザイン業界向けVRソフトウェア「SYMMETRY」の開発および販売を行う。2017年2月にSTEAMプラットフォームで無償提供が開始された「SYMMETRY alpha」は、世界で最も簡単で高速かつ高品質なVRソフトウェアのひとつ。3D CADデータを無加工でVR世界に高速にインポートすることができ、直感的でリアリティのあるデザインレビューが可能である。

主な受賞歴:2017年の新日本有限責任監査法人とEY新日本クリエーション株式会社が主催する「EY Innovative Startup 2017」のIoT部門賞や、2015年の「VRクリエイティブ・アワード」での「パノラマ部門賞」(NHKエンタープライズ共同プロジェクト)等
出展実績:2017年の「AIA Conference on Architecture 2017, Orlando」や2016年の「3D Basecamp in Steamboat Springs」等