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Morpholio LLC 長谷川徹氏に聞く、NYの建築家としてiPadアプリ開発を続ける理由
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第2回 ミーティングのお供に!「Morpholio Trace」~手で描くインターフェースへのこだわり~

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第2回 ミーティングのお供に!「Morpholio Trace」~手で描くインターフェースへのこだわり~

アメリカで多くの建築家が活用している「Morpholio Trace」というアプリがある。

調べてみると、開発したのはNYの建築家4人で創業した会社で、その中に日本人建築家もいるという・・・長谷川徹氏だ。今回、NYにて長谷川氏にインタビューを実施。建築家としてiPadアプリ開発を続ける理由を3回にわたってお届けする。

Morpholio LLC 長谷川徹氏に聞く、NYの建築家としてiPadアプリ開発を続ける理由
第1回 NYで学び、教え、経営し、iPadアプリを開発するまで
第2回 ミーティングのお供に!「Morpholio Trace」~手で描くインターフェースへのこだわり~
第3回 ミーティングのお供に!「Morpholio Trace」~理解力と決断力とコミュニケーション~

ここでMorpholio Traceでどんなことができるか長谷川さんに詳しく聞いてみたいと思います。

Morpholio Trace

Morpholio Trace
iPad ProとApple Pencilを使い、設計図面や間取り図に寸法、画像イメージなど写し書き(トレース)をしながら顧客との円滑なコミュニケーションを促進するツールです。

Morpholio Traceはどういった場面で一番使われるんですか?

Traceはミーティングの場でよく使われています。iPadをテーブルに置いて、クライアントやディベロッパーと一緒に話し合いながら間取りを決められます。

僕はよく「精度の問題」と言っているんですが、間取りを考えるときにミリ単位は絶対必要ありません。「ここは21ミリで」と事細かく説明されてもクライアントは嫌になってしまいます。こんな家具がここの空間に欲しいことが意思疎通できればよいんです。CADや細かい図面が必要になるのは施工の段階ですよね。どんな情報が必要か、どんな情報を見せたほうがよいかは相手によって異なります。

Morpholio Traceの強みはなんですか?

紙だと書いたら消せないけれど、Traceだと図面データを拡大しながら、クライアントの前で図面上に書き込んだり、消したりできます。

また、他のイラストレーションツール(ProcreatやIllustrator)と比べたとき、スケールを測れる点がMorpholio Traceの強みです。

簡単な例だと
Apple Mapsから敷地候補の場所を検索し、そのまま敷地をiPad上に配置します。作りたいアイデアを、敷地に描き込んでいくと、簡単に敷地面積を出すことができ、「何平米だとこのくらいのコストがかかる」と即座に分かります。予算を上回っている場合は、線を一本ひいて面積を視覚的に減らし、「何平米になったから予算に収まりますね」と、数秒でクライアントの要望をiPad上に現実化できます。

あと、建築家がよく使う木や人など豊富なアセットが用意されています。敷地内のどこに木をおいたら良いか話す時、木のアセットを見せて、それを移動させて、緑色に色づける
この一連の行為をクライアントに見せることが重要なんです。

Morpholio Trace

重要とはどういうことですか?

線を描きながら、モノを配置しながら説明するとクライアントは具体的に理解しやすくなるんです。

人間の脳は不思議なんです。コロンビア大学の脳科学の授業で受けた内容なんですが、「30ミリ秒」というのは触れたことが脳へ伝達するのに必要な時間。例えば両肩を触ったときそのタイミングの差が30ミリ秒以内だったらわからないんです。「300ミリ秒」というのはイメージのビジュアルが脳へ伝達するのに必要な時間。つまりは、300ミリ秒以内だとコンセプトや概念がまだ伝わっていないことになります。

これが何を意味するかというと、例えばRhinocerosなどのデジタルツールを使って数値を入れて瞬時にパラメトリックな形成をしました!としても、見ているほうは何故こうなったか理解できないんです。

もちろん、建築家として経験値を積めば、プログラミングした内容がこういう結果になると理解できるようにはなりますが、初めて見るクライアントとしては分断された情報の中で何が起こっているかちんぷんかんぷんです。

なので、あえて「時間をかける」あえて「手で描いて見せる」ということがクライアントの理解を助けるためにも、ミーティングの場で必要なんです。

「手で描く」というインターフェースは古いわけではないんですよ。

長谷川徹氏とMorpholio Trace

面白いですね!
コロンビア大学で脳科学の授業で教わったことは役立っているんですね!

これに気づいたのは開発してずいぶん後になってからです。UIUXって最後にやるものってイメージがあるかもしれないけれどSteve Jobs的にいっても逆なんですよね。エンジニア的にこんな技術があるからこの機能を搭載しよう!ではなく、ユーザーが本当に必要なものは何で、どんな使い方をするのか?そのためにどういうツールであるべきなのか?を考える。

僕自身が建築家なので「ユーザーが必要なこと」からしかスタートできないのでこの10年そうやって開発してきましたが、「ユーザーが必要なこと」を見逃すと独りよがりなプロダクトになってしまいますよね。重要なのは逆算して考えることです。

2種類のイノベーション

もちろん逆もあり得ますよ。例えば電気や車。「顧客に望むものを聞いていたら、『もっと速い馬が欲しい』と答えるだろう」というヘンリーフォードの話にあるように、イノベーションはみんなに聞いてでてくるものではない場合もあります。

両方とも技術革新には必要ですが、ことMorpholioビジネスを考えると、iPadというイノベーションはすでにあるので、ユーザーインターフェスとこのデバイス間をいかにうまくデザインするかがキーになると考えています。

ユーザーから開発フィードバックはよく来ますか?

デジタルの有利な世界ですよね。要望やフィードバックはメールでバンバンきます。フィードバックの傾向が面白いんです。ランキングがはっきりしていて、要望が多い順に並べると明らかに右裾が長い分布になります。

トップ10はみんなが欲しいものですので、これらの要望をなるべく早くユーザーに届けられるよう優先的に開発しています。

現在のユーザー数ってどのくらいですか?

正直、具体的な数値は申し上げられないのですがダウンロード数は2億を超えています。
ユーザー数としても50万人は越えていますね。メールのやりとりができるので、ドメインアドレスからだいたいどういった会社が使っているか分かります。9割方、プロの建築家の方に使っていただいています。

日本の市場に対して期待することはありますか?

ある設計事務所で昨年iPadを大量導入したときにMorpholio Traceを採用いただきました。
日本は導入には時間がかかりますが、いったん導入するとロイヤルユーザーになる傾向があります。使用する企業や教育機関などが増えていくことは期待したいです。

また、日本の家具メーカーの方々とも連携していきたいですね。Morpholio Boardに搭載されているAR家具のカタログデータは非常に精度の高いモデルです。パートナーシップのレベルにもよるんですが、これらのモデルは弊社でAR用に3Dモデルを作成していますので、家具メーカーさんにとっても営業ツールとして利用してもらえます。

Morpholio Traceの提供方法に関して確認させてください。

基本機能が搭載されているMorpholio Traceは無料でダウンロードできます。さらに、機能を追加したい場合、APP内課金で機能を増やすことはできますが、すべての機能を無制限に、常に最新の状態で使用したい場合は1年間2200円のサブスクリプションタイプのPRO版を利用いただいています。

大量導入を検討している企業の場合、Apple Volume Purchase Programを使用し、必要ライセンス本数分を99$/1ライセンスで一括購入することも可能です。また、Mobile Device Management (MDM)を使用すると、キッティング作業にかける時間を削減できたり、Apple IDナシで一括にアプリを配布できたり、アプリの管理を行うことができます。教育機関における大量導入に対しても同じような形態での提供となります。
https://www.morpholioapps.com/traceb2b/jp/

Apple Volume Purchase Programで一括購入した場合、追加アップデートはどのように入手できますか?

サブスクリプションユーザーと若干タイミングはずれますが、アップデートは配布しています。ただ、プロユーザーにはすべての機能を無制限に、常に最新の状態で使用していただきたいので、Appleさんには大量導入の場合であっても(VPPやEDUであっても)サブスクリプションになるよう対応してほしいところですね。安定して低いコストで使えるサブスクリプションモデルはユーザー側もメリットですから。
*現状はVPPやEDUのサブスクリプションモデルはAppleで対応していないようです。

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